第2回 有価証券報告書で見る業界の10年

 公認会計士による会計監査では、企業の作成する有価証券報告書の内容に関する意見表明が行われます。有価証券報告書には財務諸表をはじめ、企業の様々な情報が記載されています。今回は、化粧品・トイレタリー業界各社の有価証券報告書を利用し、10年前と比較して、業界各社の様々な指標の推移を分析したいと思います。

 分析の対象としたのは業界の主要企業である花王、コーセー、資生堂、ユニ・チャーム、ライオンです。

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 まず、各社従業員の平均年齢ですが、10年前が38.3歳であったのに対し、直近期では41.1歳となっています。政府統計(賃金構造基本統計調査)によると一般労働者の平均年齢は10年前で39.8歳、平成21年調査では41.1歳となっており、年齢の面ではほぼ全国平均と似たような構造であると読み取れます。

 一方で従業員の平均年間給与ですが、業界各社では10年前平均が666万円、直近期が694万円と4%程度上昇したのに対し、国税庁統計 (民間給与実態統計調査)によると10年前が461万円に対して、直近統計では429万円と7%程度減少しています。業界の主要企業を中心とした平均なので全国平均給与よりも金額が上回っているのは当然なのですが、このデフレ下で平均給与が上昇している点が特筆すべき点です。

 特にユニ・チャームでの上昇が著しく、14%上昇となっています。それを除外してもなお残りの企業の平均上昇率は2%程度であり、 業界の底堅さを感じます。

 次に、連結売上高に占める研究開発費の比率を見てみましょう。10年前の各社平均が2.6%であったのに対し、直近期でも2.5%と、ほぼ横ばいの結果となっています。政府統計(科学技術研究調査)でも資本金100億円以上の企業の売上高に占める社内開発費の全産業平均がここ10年でやはり横ばい傾向にあることからも、こちらも全産業と大きく傾向に違いはないと考えられます。個別の企業で見ると、コーセーで10年前の1.7%が直近期では2.5%まで上昇している点が特筆すべき点です。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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