第5回では、日本が数年後の適用を検討しているIFRS(国際財務報告基準)の概要について解説しました。第6回及び第7回では具体的にどのような影響を日本企業が受けるのかについて解説します。なお、解説は、2010年10月末日時点で適用されているIFRSの各基準を前提とします。
企業の業績は様々な指標で表現されますが、一番身近なものはやはり「年商」、すなわち売上高だと思います。化粧品・トイレタリー業界各社は売上高を情報開示していますが、今後IFRSの適用により、業界各社の売上高の数字が大きく変わってくる可能性があります。
化粧品・トイレタリー企業の販売活動に付随する主な業界慣行としては、図表1のようにリベート、 返品、 ポイント付与などが存在します。
リベートとは取引高等の一定の条件が達成された場合にメーカーから卸売業者、小売業者に対して支払われる報酬をいいます。リベートの種類や方式も様々なのですが、実質的な値引きとして取引に組み込まれるケースが多々あります。
日本の化粧品・トイレタリー業界各社の現在の会計慣行としては販売費として経費処理するケースもあれば、売上高のマイナス項目として処理するケースも見られます。IFRSが適用された場合、特に実質的な値引きと判断される場合は売上高からマイナス処理することが求められますので、一部の企業で売上高が大幅に減少する可能性があります。
次に返品ですが、化粧品・トイレタリー業界では、卸売業者や小売業者からメーカーに対して新製品との入れ替え等で返品が行われることが多々あります。
売上実績に占める返品比率が重要である場合は返品調整引当金という形で売上総利益を調整する形で引当金を計上するのが一般的ですが、IFRSが適用された場合、返品可能性を信頼性をもって見積ることができる場合には、売上高の計上時に返品相当額を売上高からマイナス処理することになります。
また、返品可能性を信頼性をもって見積ることが出来ない場合、販売時点で売上高の計上自体が出来なくなる可能性もあります。これもリベートと同様に、売上高の減少要因となります。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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