最終回(第7回) 効用を実感できる販売チャネルの条件

 前回までにマーケティングミックスの4Pのうち、Product(製品)、Price(価格政策)、Promotion(販促政策)について紹介しましたが、今回は最後のPlace(販売チャネル政策)です。

 Placeとは、どこで売るのか? ということです。広義には店舗か無店舗(通販等)ということから始まり、狭義には同じ店舗であっても専門店なのか百貨店なのかコンビニエンスストアなのかといった業態別という視点も加わってきます。

 昔は化粧品の販売チャネルと言えば専門店か百貨店でしたが、昨今はコンビニエンスストアやドラッグストア、そして通販等も加わり非常に多岐にわたっています。これらの中からどのチャネルを選択するかは、その商品の普及に大きな影響を及ぼすことは言うまでもありません。

 これまでマーケティングミックスについて検討してきたなかで常に根底にあったのは、ターゲットとなる男性、特に高感度なミドル世代にとっての"効用"です。

 これは保湿とか美肌といった直接的な効能ではなく、それらから実現されるより高次の目標と言い換えることが出来ます。ある意味男性のお洒落をコーディネートすることが求められる訳ですが、販売チャネルもそれにふさわしいものでなければなりません。となるとアパレルショップ、スポーツカジュアルショップなどが思い浮かびます。

 2009年12月アメリカのアパレルショップAbercrombie&Fitch(アバクロ)が日本に初上陸した際、店内に漂う香水の香りが話題を呼びました。これは店内で売られているものですが、アバクロのファッションとこの香水は一体のものとして認識されるようになったのです。

 元来ファッションと化粧品(美容)は親和性が高く、以前から両者のコラボレーションは数多く行われてきました。いま改めて男性用化粧品市場の開拓を考えたとき、この両者は発展性の高い組み合わせということができるのではないでしょうか。

 連載は今回が最終回となります。男性用化粧品市場の開拓についてマーケティングの基本原理に沿って分かりやすく解説してきたつもりです。以前より未開の大市場として男性用化粧品には注目をしていました。そして今回原稿を書き進めながら改めてこの市場のポテンシャルの高さに気づかされました。数カ月前にはSONYやPanasonicなど、名だたる日本の家電メーカーの巨額な赤字決算が相次いで発表されるなど日本の経済見通しは必ずしも明るいものではありません。

 そのような経済環境のもと、これほどの潜在規模を備えた未開市場というのは類を見ません。その意味では男性用化粧品という有望市場の開拓が日本経済再生の一助となることを願うばかりです。

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大神賢一郎

産業能率大学総合研究所主席研究員

コンサルティングファーム勤務を経て、1995年学校法人産業能率大学に入職。様々な業種でのマーケティング戦略研修や、小売、外食などチェーン企業における店舗業務改革指導、店長教育、スーパーバイザーマニュアル作成などを手がけており、消費市場の動向に詳しい。

http://www.hj.sanno.ac.jp/cp/page/3159

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