第13回 従業員による人件費不正

【週刊粧業2015年5月11日号5面にて掲載】

 公認会計士の五藤です。第10回のコラムに引き続き、今回も人件費に関する不正についてご紹介いたします。今回は従業員が主体となって行う人件費不正です。

①架空残業代の受給

 (不正事例)

 従業員Aは、得意先に訪問後定時に直帰したが、得意先を出た時間を偽り残業したものとして勤務時間を申請した。上司は残業申請内容と従業員Aが提出している業務日報とを照らし合わせ、齟齬がなかったため承認した。その結果、従業員Aに架空の残業代が支払われた。

 (対応策)

 残業代は各従業員の残業時間により計算して残業代の支払いが行われますが、その残業時間の把握については従業員の自己申告によっている会社も多いと思います。特に営業職等の外回りが主の従業員については、その勤怠状況を正確に把握することが難しくなります。

 完全に防止するための対策を講じることは困難な場合が多いと思いますが、従業員へのけん制を働かせることである程度防止できます。たとえば以下のような対応策が考えられます。

・残業時間の事前申請状況と実際の時間のかい離している場合に理由の説明を求め、その合理性について検討する
・従業員ごとの残業時間の推移を定期的にモニタリングし、残業時間の多い従業員や、急に増加した従業員について理由を調査する
・従業員が提出する日報等について、可能な場合には日報に記載されている訪問先に、定期的に訪問状況をヒアリングする

 上記のような対策が即座に発見につながる場合は多くないかもしれませんが、これ自体が従業員に対するけん制となり、正確な残業時間の申告を促すとともに、効率的な業務の推進にもつながります。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿、セミナー講師等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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