第27回 化粧品原料メーカー・商社のアジア戦略①

【週刊粧業2016年8月1日号4面にて掲載】

 今回と次回は化粧品原料メーカー・商社のアジア戦略についてご紹介したいと思います。日本の企業の生産する化粧品原料は世界的に評価が高いことから、消費市場として急成長を続けるアジア市場の開拓に注力する化粧品原料メーカー・商社が増加しています。

■一丸ファルコス

 同社は、天然素材の研究開発型企業として「オンリーワン製品の開発」を目指して、年間で1000品目にもおよぶ製品を率的に生産・販売しています。

 海外では、EU、北米・アジアなど世界30カ国で現地の代理店を通じた販売を展開。国内と同じく企画提案型の営業活動により、世界的な化粧品メーカーを中心に取引を広げています。

 2008年には同社初の海外拠点として設置した上海駐在員事務所は2016年4月に法人化、更なる中国市場への原材料マーケットとしての拡販強化に取組む体制を整えています。

 今後は、海外の代理店と共同で、タイ、インドネシア、台湾、フィリピン、ベトナムなど現地の化粧品関連企業を対象にしたセミナーの開催を強化していく他、「In₋Cosmetics Asia」などの展示会へも積極的に出展していくとともに、ASEAN諸国向け美白化粧品ニーズの拡大に合わせた、原材料の事業戦略を推進する予定です。

■岩瀬コスファ

 化粧品原料商社最大手である同社は、中国、フランス、ベトナム、韓国に現地法人、台湾、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、インド、ミャンマー、ロシアに販売代理店ネットワークを構築、グローバルな事業を展開しています。海外展開で注力しているのは中国とベトナムです。

 中国では、科絲發国際貿易(上海)有限公司と科絲發国際貿易(上海)有限公司を中核に展開、2011年には北京分公司を設置し、華北地区、華北地区、華南地区を中心に内陸部まで広範囲にカバーする体制を整備しました。

 両子会社は、外資系メーカーへの拡販だけでなく、ローカル系メーカーへの拡販にも注力しており、既存の固定客を中心とした更なる販売拡大に取組んでいます。

 ベトナムでは、美白ブームが加熱し、成長著しい東南アジア市場の事業拡大を目的に、合弁パートナーがアセアン市場で販権を所有する世界の原料ソーシングと、同社が広範に同地域に販権を保有する日本産原料を統合して、ポートフォリオを充実させていくとともに、現地倉庫とも提携して、将来的にはアセアン市場、インドも含めた広い範囲でのストックポイントとしての機能も高めていく予定です。

■オリザ油化

 米糠、米胚芽の有効活用に始まった同社の事業は、時代のニーズを的確に反映することによって、一般食品、機能性食品、医薬品、化粧品、肥料・飼料へと広がっています。化粧品では、アンチエイジング素材を中心に60品目を越える製品をラインアップしており、アジアや欧米など海外での売上比率も上昇しています。

 販促活動として、台湾で毎年行われる機能性食品・化粧品展示会「Bio Taiwan」、中国の上海と広州で開催される化粧品原料と医療用原料の展示会「The Personal Care and Homecare Ingredients」へ出展している他、原料に関する技術セミナーも行っています。

 ASEANや中東ではムスリムが多く、ハラール認証原料の問い合わせも多いことから、同社では11年から、ハラール認証取得準備を進め、2014年に33品目(約半分が化粧品原料)についてハラール認証を取得しました。現在、認証を更新中であり、2016年度中には62品目(約半分が化粧品原料)についてハラール認証が取得できる予定となっています。

 おわりに次回は、日光ケミカルズ、マツモト交商、丸善製薬の動向についてご紹介したいと思います。
この記事のお問い合わせはこちら

浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

一覧に戻る
ホーム > 連載コラム > 第27回 化粧品原料メーカー・商社のアジア戦略①

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop