コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林一俊)は、魅力的な香りをもつ天然素材として、今回新たに『藤の花』の香りに着目し、長谷川香料との共同研究のもとで香気成分の解析を行い、初めて香りの再現に成功した。本研究成果(※)は、魅力ある"和"の香りを生かした製品への応用を検討していく。 藤の花は古代よりその美しさを愛でられ、「古事記」「万葉集」を初めとする数多くの古典にも登場するほど、日本人と長い歴史をともにし、親しまれてきた。一方で、その開花期間は短く、香りを楽しめるのは4~5月頃の数日間と限られるため、これまで香気成分についての研究報告は少なく、特に、品種間での比較などを行った報告はわずかな例しかなかった。 今回、藤の中でも日本固有種であるヤマフジ系とノダフジ系の二種に着目し、その花の香気成分の詳細な分析を行った。その結果、ヤマフジ系である"紫花美短"では171成分、"白花美短"では125成分、ノダフジ系である"ノダフジ"では140成分、"八重黒竜"では171成分の香気成分が同定された。その中でも特徴的な香気成分として、ヤマフジ系ではベンジルアセテート(benzyl acetate)、メチルベンゾエート(methyl benzoate)が、ノダフジ系ではリナロール(linalool)、ベンズアルデヒド(benzaldehyde)、アセトフェノン(acetophenone)が各々検出された。 この結果より、これらの成分がヤマフジ系の華やかさのあるホワイトフローラルの香り、ノダフジ系のさわやかさのあるグリーンフローラルの香りの印象を裏付ける香気成分であることが明らかになった。さらに、その香りの成分情報をもとに藤の花の香りを再現することにも成功した。
同社では、"香り"も化粧品に求められる重要な要素と位置づけ、魅力ある香りの探索、開発を行っている。これまですずらん、スイートピー、ホワイトジンジャーなど、天然の花の香りを詳細に解析し、再現した香りを各種の化粧品に応用してきた。その一方で香りがもたらす精神へ及ぼす影響や肌効果についても研究、発表を行っている。 今回の藤の花から得られた香気成分は、その後の検討で優れた抗酸化効果(フリーラジカル消去能)を有することも確認され、さらに研究を進める予定だ。 今後は本研究成果をもとに、藤の花を"和"のイメージを持つオリジナリティの高い香料素材として、新たな魅力ある香りを開発し、フレグランスやスキンケア製品、ヘアケア製品等への応用を検討していく。 ※本研究内容は、『第55回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会』において発表している。※【週刊粧業】2012年コーセー小林一俊社長新春インタビューはコチラ
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この記事は粧業日報 掲載
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