REIKO KAZKI主宰・かづきれいこ氏、メイクボランティアはメーカー・ブランドの垣根越える

週刊粧業

カンタンに言うと

REIKO KAZKI主宰・かづきれいこ氏、メイクボランティアはメーカー・ブランドの垣根越える

 私は阪神大震災を宝塚市(兵庫)で被災者として経験したため、化粧品やメイクボランティアが必要なタイミングがある程度わかっていました。

 阪神のときは、被災直後は生きるか死ぬかに必死の状況でしたが、1カ月ほど経つと、女性は不思議なことに眉毛の処理をし始めました。その後にスキンケア用品や口紅を欲しがるのです。

 この経験を今回の震災に当てはめ、約1カ月後から現地支援を始めました。タイミングはやはりジャストでしたね。こういうときは、1カ月が過ぎたら全面的にやったほうがいいですよ。

 初めて訪問したのは仙台市若林区の避難所です。昨年4月でした。私や「仙台三越店」のスタッフ、フェイシャルセラピスト協会会員ら17人でメイクを行いました。

 化粧なんてしていいのかという時期でもあったので、最初は恥じらいや戸惑いもあり出てこられない人が多かったですが、私のファンが何人かいらっしゃって、1人2人とキレイな表情になっていくと、その後は堰を切ったように参加者が押し寄せました。1カ月間ずっと鏡を見ていない人や、「命をもらった気がする」とまで言ってくださる人もいました。

 2回目は5月。名取市(宮城)と郡山市(福島)の避難所を、鍼灸師の先生方と一緒に訪問しました。メイクと鍼灸の組み合わせは大変喜ばれましたね。

 3回目は7月の石巻市(宮城)です。ここには、震災後の慣れない避難所生活で顔面神経麻痺になった女性がいました。顔がゆがんでしまい、「化粧なんてとんでもない」とおっしゃっていましたが、顔面麻痺に効くデザインテープを貼り、血流マッサージやメイクをして差し上げると、随分と顔が楽になったと喜んでいただけたのが印象に残っています。

 その後は活動場所を仮設住宅へと移しました。これまでに合計5回、現地で活動してします。メイクをさせていただいた人には、スキンケアやメイク品も1つずつ手渡しさせていただきました。

 メイクボランティア活動を行ううえで最も苦労したのは、スタッフや(フェイシャルセラピスト協会の)生徒さんから募った支援物資の届け先がなかなか確保できないことでした。

 そんな中、私の生徒だった福島医科大学の先生にも受け入れを依頼したことがあります。その先生は、自分の車に支援物資を積んで仮説住宅などを回ってくれたのです。彼女は私のメイクを習っていたので、化粧品を手渡ししながらいろんなケアができます。中でも「ふき取り洗顔」は好評のようでした。水が不足しているので、コットンにオイルと化粧水を塗って洗顔します。彼女は「病気を治す医療よりも喜ばれた」と笑っていました。彼女はその後、医療器具を入れるはずの治療バックの中に「ふき取り洗顔」セットを入れて、仮説住宅を駆け回ってくれました。

女性の笑顔や元気は暗い場所に灯りを照らす

 こういう緊急事態の際に、化粧品は贅沢品と言われることがありますが、決してそうではありません。生死の問題を乗り越えて「生きられる」と思った瞬間、人は「元気」を必要とします。そんなときに化粧品は大きな力になります。ただ、化粧をするまでの余裕がない人や、キレイになると悪いのではないかと自重してしまう人もいます。だから、私たちが現地に行くのです。

 印象的なエピソードはたくさんあります。仙台市で有名な踊りの先生がいらして、津波で着物をすべて流され、踊る場所を失ってしまったそうです。アイデンティティを根こそぎ奪われたのです。しかしその方にメイクをして差し上げると、「また踊りたいな」と言ってくれました。元気な顔になると、何かできるかもしれないと力が湧いてくるのです。

 女性が元気になると、周りの人も元気になりますよね。女性が「キャー」と華やかな歓声を上げると、笑いのなかった場所に花が咲きます。暗い部屋に明るい電気がパッとつくように。男性は、女性がキレイになると歓声を上げ、喜びます。

 ある高齢の女性がメイクでキレイになって喜んでいると、それを見た旦那さんが思わず「飲みに行くか」と声を掛けたのです。飲みに行ける場所なんてないのに。メイクは失われていた会話を生みだし、日常を取り戻せる感覚を与えることができるのです。

 長い間、メイクボランティア活動を行っていますが、どんなに状況が過酷でも、やはり女性の力は偉大だと感じました。

 メイクは流行やオシャレを追求するだけではありません。母親世代や高齢者、病気の方などを元気にするメイクが、私たちにしかできないことであり、存在意義でもあるのです。

 今は被災地でも化粧品を購入できる人は多いでしょう。でも、私たちができることはいろんな話を聞きながらメイクをすることです。長く続けることが大事で、今後もどんどんやっていきます。

 時間とともに現地のニーズも変わってくると思うので、支援のかたちも広がっていくでしょう。メイクだけでなく、他の業界とご一緒して新たな活動もやってみたいですね。現時点では、仮説住宅がなくなったら、そこが活動の終着点かなと思っています。その後は、その辺りの老人ホームなどを回らせていただきたいですね。

 メイクボランティアは、メーカーやブランドの垣根を越えると思います。どこの会社が支援したとかではなく、メイクボランティアという枠の中にいろんな会社が入って支援活動した方がいいですよ。今後、今回のような大災害が起きた際には、いろんな化粧品メーカーが有志で集まるべきです。

※【週刊粧業】業界のキーマンに聞く~大震災がもたらしたものとはコチラ

※【日刊コスメ通信】CSR・社会貢献活動コチラ

週刊粧業web版紹介.jpg

ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > REIKO KAZKI主宰・かづきれいこ氏、メイクボランティアはメーカー・ブランドの垣根越える

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop