化粧品、試薬・薬品、健康食品の容器・デザインを手がけるグラセルは、本社を置く大阪府茨木市内にモデル作成工房「モックラボ」を新設し、9月より完成品のような立体モデルを作成・提供するサービスを開始した。
「モックラボ」では、切削加工から塗装・インレタ貼りまで一貫できる体制が整い、発売前の撮影用モデルの作成などにも活用できる。今後の成長戦略とともに、立体モデルの作成・提供サービスについて、谷村敏昭社長に話を伺った。
営業提案力の向上に手応え
新型容器開発への投資継続
――2015年3月期のこれまでの状況をお聞かせください。
谷村 4月からの消費増税を前にし、2~3月の売上げが大きく伸長したため、今期予算は厳しめに設定しましたが、増税の揺り戻しが見られたのは5月のみで、これまで前年を上回るペースで推移しています。
BtoB事業を展開する企業が売上げを伸ばすには、得意先の新製品、リニューアルの獲得、そして新規顧客の開拓の3つの取り組み以外に方法はなく、今期もそれらをしっかり獲れていることが業績につながっています。
細かい要因をみていきますと、いくつか考えられますが、入社から5年以上のキャリアを積んだ営業担当者が増えてきたことが大きいと感じています。個々の営業提案力がついてきたことに加え、得意先との関係が深まってきたのではないでしょうか。
もう一つは、年間に開発する新製品の数です。取引先様には、常に新しい提案が可能な体制を維持することは重要です。今年も新規金型への投資を継続して行っており、他社と比べてもその数は圧倒的に多いと思われます。
――以前の取材では、金型への積極的な投資は、「容器の百貨店(総合デパート)」を目標に掲げているからだとおっしゃっていました。その進捗状況は。
谷村 スキンケア向けの容器はある程度、顧客のあらゆる要望に対応できるラインナップが揃ってきた印象を持っています。しかし一方で、メーク関連、トイレタリー関連の容器については、品揃えにまだ課題を残している状況です。今後も、顧客ニーズに応え切れていないと感じる部分をしっかり穴埋めしていくと同時に、オーガニック・ナチュラル化粧品や男性用化粧品など市場が拡大傾向にあるカテゴリー容器の品数も増やしていきます。総合容器メーカーとして、あらゆる要望に対応可能な基盤を強固にしていくつもりです。
製品カタログも従来のスキンケア・トイレタリー容器をまとめた総合カタログ「スタンダードカタログ」、メーク関連をまとめた「メイクカタログ」、海外製容器をまとめた「インポートカタログ」に加え、新たに健康食品・試薬・薬品の容器をまとめた「リージェントカタログ」、新製品を集約した「スタンダードカタログ(別冊)」を作成しました。
立体モデル作成工房を設立し、
新サービスとして提供開始
――今回新設した「モックラボ」も含め、容器の加飾デザインの無料提供、Webシミュレーションの導入など、業界に先立って提案しているサービスが増えてきました。
谷村 いずれも顧客の要望や悩みを聞き入れ、導入してきたサービスであり、さらにブラッシュアップしていかねばならないと考えています。「顧客からの要望に応えたい」という気持ちは、どの企業も持っており、取り組んでいると思います。そうした中で、他社との違いを挙げるとするならば、それは「決断力」と「決断するスピード」だと感じています。
私自身、化粧品容器はアパレルブランドのように『流行』を追い続けていくものだと捉え、その時代時代に合った容器を提供し続けることが、業界で生き残れる唯一の方法だと確信しています。そのため、今後も新製品開発の力を緩めることなく、容器を彩るデザインも常に最先端を進んでいなければならないという意識で取り組んでいくつもりです。
「モックラボ」の設立もまた、時代に合ったサービスを提供したいと考えたからです。切削機を導入して、切削加工から、塗装・インレタ貼りまで一貫して作成できる体制を整えています。完成品前の撮影用モデル(写真上)などにも利用してもらいたいと思います。3Dプリンター(写真中)も導入し、よりスピーディに立体モデルを届けることが可能です。内製化することで、外部へ情報が漏れる心配もなく、安心して利用してもらえる環境にあり、外注にも対応していきます。
設備面では、検査ラインに新たにトレイ用エア洗浄機を開発し、導入しました。精密機械などに用いる除電装置を応用したエア洗浄機で、エアブローと同時に除電・エアバキュームし、ホコリや髪の毛などを一気に取り除きます。トレイ用エア洗浄機の総代理店となって販売も行い、業界の品質向上にも寄与していきたいと思います。
また、乾燥機能付きの全自動洗びんラインも新たに導入しました。試薬・薬品を扱う顧客を中心に、満足度向上につなげていきます。
タイ工場は12月稼働に先駆け、
現地開催の展示会に出展
――今期はいよいよ、生産工場を持つ容器メーカーとして、タイで海外事業をスタートします。
谷村 「グラセル タイランド」は、12月からの稼働に向けて準備を進めています。国内同様、新規金型への投資を積極的に行っていく予定です。それに先駆け、11月上旬には現地で開催された展示会「COSMEX2014」(写真下)に出展しました。アジア市場の進出・拡大を目指す日系企業も踏まえ、タイ語、英語、日本語の3タイプの製品カタログを用意し、また、タイで製造販売する容器だけでなく、日本でしかできない特殊なオリジナル容器も展示して、当社の認知度とともに開発力をアピールしました。
来年に控えるASEAN自由貿易協定(FTA)締結を追い風にし、軌道に乗せていきたいと思っています。
この記事は週刊粧業 2014年12月1日号 3ページ 掲載
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