コーセー、iPS細胞から誘導した皮膚線維芽細胞の機能回復を発見

粧業日報 2018年6月6日号 4ページ

コーセー、iPS細胞から誘導した皮膚線維芽細胞の機能回復を発見
 コーセーは、iPS細胞から皮膚線維芽細胞への分化誘導法を確立するとともに、誘導した細胞のテロメア長が元の細胞よりも伸長することを明らかにした。さらに、細胞内のエネルギー産生を司る「ミトコンドリア」の質が、iPS細胞から誘導した皮膚線維芽細胞では、より高まることを初めて確認した。この研究成果を、6月29日・30日に開催される「第43回日本香粧品学会」にて発表する。

 これまで同社は、元京都大学iPS細胞研究所 特任教授で、現コーセー研究顧問の加治和彦氏とともに、同一人物から長期(36~67歳)にわたり採取した皮膚線維芽細胞と、それらから作製したiPS細胞を解析・評価し、皮膚老化の研究に取り組んできた。過去にはiPS細胞から表皮細胞(ケラチノサイト)への分化誘導に成功している。

 今回は、老化メカニズム解明のための新たなアプローチとして、iPS細胞から、皮膚線維芽細胞へ分化誘導することに成功した。

 研究では、これまでの研究においてテロメアが加齢により短縮することを突き止めていた中で、元となる皮膚線維芽細胞と作製したiPS細胞、再誘導した皮膚線維芽細胞のテロメア長を比較した。

 元となる皮膚線維芽細胞(67歳時に採取)はiPS細胞にすると、テロメア長が伸長し、誘導した皮膚線維芽細胞も元の細胞よりテロメア長が伸長していることがわかった。

 さらに、これまでの研究で皮膚線維芽細胞内のスーパーオキシドディスムターゼ2(SOD2)の量は加齢に伴い減少することを突き止めていた中、これらの細胞のミトコンドリア中に存在する活性酸素消去酵素のSOD2量を測定した。

 その結果、誘導した細胞の方が、元の細胞と比べてSOD2の量が顕著に上昇していることが明らかとなった。このことから、加齢によって低下するミトコンドリアの質が、iPS細胞を経て再誘導する過程で回復することがわかった。

 SOD2の低下は、細胞が活性酸素によるダメージを受けやすい状態になっていることを意味しており、iPS細胞を経て再誘導された細胞では、活性酸素によるダメージに対応する能力が高いと考えられたという。

 同社は、同一人物由来の加齢モデル細胞やiPS細胞技術を用いた老化研究は他に例がないことから、老化メカニズム解明に貢献する様々な知見を見出すべく、研究を進めていく。

 また、今回の研究成果を応用し、加齢に伴う細胞機能低下を制御できる成分の探索も続けていく。
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