コーセーは、星薬科大学 組織再生学研究室 輪千浩史教授との共同研究により、加齢に伴う真皮エラスチン線維の変性は、小胞体シャペロンBiP産生量の減少によるフィブリリンの形状変化が原因であることを明らかにし、アスタキサンチンがこの小胞体シャペロンBiP遺伝子の発現量を高めることを見出した。なお、この研究で得られた成果を今秋発売の新商品へ応用していく。
同社は、シワやたるみが発生するメカニズムを解明するために、1990年代から皮膚の構造や弾力を維持する上で重要な役割を担う真皮エラスチン線維をターゲットにした研究を続けてきた。
真皮エラスチン線維は、細胞から分泌されたフィブリリンと呼ばれるタンパク質からなる細線維上にトロポエラスチンと呼ばれる球状のタンパク質が沈着・架橋して形成されるもので、それが加齢や紫外線により変性すると、シワやたるみが生じるといわれている。
こうした中、光老化に伴う皮膚症状のメカニズムについては、紫外線照射によるモデル実験を用いた報告が多くなされているのに対して、加齢に伴う自然老化のメカニズムについては、細胞での再現実験が困難なことから報告が少なく、真皮エラスチン線維に関する報告もほとんどなかった。
そこで同社は、同一人物由来の加齢モデル細胞系列を用いて、加齢に伴うフィブリリンの形状変化を見出し、そのメカニズムの解明に向けて検討を行った。
今回、同一人物由来の加齢モデル細胞系列のうち、老齢細胞(62歳)と若齢細胞(36歳)を用いてフィブリリンの線維形状を比較したところ、老齢細胞では部分的に凝集し、不均一なフィブリリン細線維構造が確認された。
また、細胞が作り出すタンパク質を網羅的に解析した結果、老齢細胞はタンパク質のクオリティーを制御する小胞体シャペロンBiP産生量が減少していることがわかった。
そこで、若齢細胞のBiP遺伝子を人為的に減少させたところ、老齢細胞と同様な、凝集したフィブリリンの線維構造を形成することが確認された。
これらの結果より、小胞体シャペロンBiPの産生量を高め、フィブリリンのクオリティーを向上させることが、加齢による真皮エラスチン線維の変性を改善し、皮膚のハリ弾力向上へつながると考えられるという。
次に、アスタキサンチンに活性酸素の中でも特に老化に影響のある一重項酸素に対する優れた消去効果と、コラーゲンの変性を抑制する効果を見出してきた中で、老齢細胞にアスタキサンチンを添加したときの真皮エラスチン線維形成への効果を検討した。
この結果、アスタキサンチンに小胞体シャペロンBiP遺伝子の発現量を有意に増加させる効果を見出した。つまり、アスタキサンチンは加齢した細胞において、フィブリリンのクオリティーを向上させ、真皮エラスチン線維の変性を抑制し、改善する可能性があると考えられるという。