企業連載コーナー

株式会社 アルビオン

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第5回 女性の登用を積極化し、さらなる飛躍を期すアルビオン

2014.11.10

「相手をよく知ること」が女性活躍の要諦

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 アルビオンの女性登用の歴史は古く、今から58年前の1956年3月の創業時までさかのぼる。

「世界一の高級化粧品メーカー」を目指して出発したアルビオンは、「商品力」と「接客力」の高さを武器に超高級化粧品を販売するという大勝負に打って出たが、「接客力」の面を一手に担っていたのが初代美容部長であり、同社初の女性取締役でもあった町田智子氏であった。小林英夫会長に「彼女がいなかったらアルビオンの今日の発展はなかった」と言わしめるほど数々の足跡を残し、今でも多くの取り組みが脈々と受け継がれている。

 今回インタビューを快諾してくれた大和緑 取締役 営業本部副本部長も期間は短いながらもその薫陶を受けた一人だ。全社員の8割以上が女性という現在のアルビオンを女性幹部として率いる大和氏に、女性登用の現状や今後の展望などについて話を伺った。

女性の管理職への登用は
3割を超える水準で推移

 ――御社の女性登用のこれまでの経緯、変遷をお話ください。

 大和 アルビオンは創業当初より「世界一の高級化粧品メーカーを目指す」という企業理念のもと、商品力と接客力の向上に力を入れてきました。

 創業メンバーの一人で当社初の女性取締役を務めた町田智子氏は、単に美容家としてではなく、自ら愛用者を開拓し、製品開発にも関わって、乳液から始まる独自の美容哲学を実践されました。また、熱い情熱をぶつけながら部下を率い、教育にも邁進され、創業から発展への非常に困難が多い時期に様々な難関に立ち向かい、社業の発展に貢献されました。こうした「町田イズム」は現在も脈々と受け継がれています。

 「創業以来、商品と接客にこだわってきたが、今後もそれは変わらない」と小林章一社長は常々申しておりますが、商品の開発や企画、美容部員の採用や指導など、当社の中核となる部署の実務責任者はほぼ女性で占められています。町田氏の時代から各支店のBAマネージャーの人事は、現場のことを最もよく知るキーマンとなる女性幹部が社員一人ひとりの実績や性格、お店様やお客様の評価から、家族構成や子どもの年齢など家庭の事情に至るまで詳細に把握しながら取り仕切ってきました。町田氏はあらゆることに気を配り、女性が転勤する際には家族の了承をとりつけながら適材適所の人事異動を実施してきました。そうしたよき伝統が今でもしっかりと受け継がれています。

 ――商品開発や人材開発の部署で実務責任者に女性を就けることのメリットを教えてください。

 大和 商品や接客という我々が最も重要視している部署に女性を就けるのは、「実際に商品を使うのは女性であること」「実際に使ってみて最終的に判断できるのは女性であること」が大きいと言えます。

 各支店のBAマネージャーにも発売前の商品を実際に使用してもらい、細かいところまでチェックしてもらっています。それによって改善するケースも少なくないですし、場合によっては発売を延期するといったこともあります。商品開発や人材開発といった部署はもちろん、研究所においても女性が多く関わっています。

 ――現在、人材開発室の室長も女性が就いていますね。

 大和 人材開発については、当社が最も大事にしている教育に直結する部署ですので、過去の歴史を振り返ってもほぼ女性が就いています。

 相手に合わせたきめ細かい対応ができるという意味では、むしろ女性に適性があると思いますし、トレーナーやアシスタント、BA(美容部員)は皆女性ですので、彼女たちの気持ちを察することのできる人が人材開発を担うべきだと考えます。

 ――女性の登用について指標となる数値を教えてください。

 大和 当社においては、BAが全社員2840名の半分以上を占めるということもあり、女性が2350名と8割を占めています。そうした中、女性の中間管理職以上への登用は3割を超える水準で推移しています。

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意欲のあるBAの能力アップに向け
「ジョブチャレンジ制度」を導入

 ――女性が働きやすい環境づくりの現状について教えてください。

 大和 最近では、共働きというライフスタイルが定着し、出産後も働き続けたいという女性が増えてきました。これへの対応として、本年は産休・育休明けの女性たちの復帰をサポートすべく、セミナーを東京、名古屋、大阪で開催しました。そこでは、時短勤務や各種支援金・給付金制度について細かくアドバイスを行うなどして、職場復帰を支援しています。また、出産後も働き続けるという就業スタイルが定着したことで、職場においても子どもを持つ女性社員の大変さを理解する風土も醸成されつつあります。

 さらに、当社は化粧品会社として、女性に子どもを育てながら継続して働くための選択肢を増やしてもらいたいとの想いから、2009年4月1日より、当社社員のみならず近隣企業様も共同で利用できるコンソーシアム型の事業所内保育所「Kuukids(クーキッズ)」(中央区銀座1丁目)を運営しています。

 ――女性が能力を最大限に発揮するためにどのような施策を実施していますか。

 大和 当社では、BAの皆さんの「仕事を通じていろいろな経験をしてみたい」という想いに応えるため、広報・PRや商品企画、Web制作、国際事業部など異なる部署を経験し、自らの能力を高めることができるよう、「ジョブチャレンジ制度」を2000年にスタートさせています。

 実際、この制度を利用した多くのBA社員は、自ら選んだ業務ということもあり、やりがいを感じて仕事に取り組んでくれています。

 お客様と最前線でコミュニケーションを図っているBAは、お客様目線で物事を考えることができるので、各部署から定期的に募集がありますし、例えば、国際事業部では語学が堪能なBAを募集するといったケースもみられます。

 ――女性の能力を活かす上でおさえるべきポイントを、実体験も含めてお話いただけますか。

 大和 やはり、「相手のことをどれだけ知っているか」というところに尽きると思います。

 接客においては、いかにお客様お一人お一人に合った最適なアドバイスができるかが大切になりますし、そのためにはお客様のライフスタイルまで熟知していなければなりません。

 私もBAからスタートし、様々な部署を経験してきましたが、「相手をよく知ること」「仲間を思いやる気持ちを持つこと」が、女性社員比率が8割を超える当社では特に必要なことだと考えます。

 あと、叱るときも中途半端な気持ちで叱ってはいけません。真剣に向き合っていくことが大事です。これについても最終的には「相手をよく知る」ということができていないと難しいと言えます。

 ――取締役就任以降、仕事を進めるうえで特に意識していることは。

 大和 以前は、いろいろと厳しく指導してきましたが、最近では後進も育ってきておりますので、そういうことは任せながら、会社全体の士気が高まるような、現場が活気づくような振る舞いをすることに徹しています。

 各支店の支店長や営業、美容部長やマネージャー、トレーナー、BAはもちろんのこと、入社1年目の新人の皆さんとも積極的にコミュニケーションを取るようにしています。

 そういうことを通じて、風通しのよい組織にしていきたいです。

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3人目の女性取締役は
自らの手で育てていく

 ――女性の登用を積極化するためにどのようなことに取り組んでいきますか。

 大和 女性の登用を積極化するためには、女性にもっと頑張ってもらわなければいけません。各部署で責任あるポジションに就いている女性たちには、これまで以上に自分に厳しく仕事をして欲しいと思いますし、積極的な仕事への取り組みを希望します。

 現在も本当に多くの女性が一生懸命仕事に取り組んでおり、素晴らしいと感じることが多いですが、もっと高いレベルを目指したいと考えるのなら、もっともっとしなければならないことは沢山ありますので、自分で切り開きながら仕事をしていって欲しいと考えます。

 私の役割は、そういう意欲的な女性を一人でも多く生み出していくことだと考えていますので、意欲のある女性たちにモチベーションを高く仕事をしてもらえるよう、働きやすい環境を積極的に整備していきます。

 ――60年近い社歴の中で2人目の女性取締役という重責を担っています。在任期間中に成し遂げたいことは何ですか。

 大和 取締役への就任から約半年が経過しましたが、その間だけでもいろいろな出来事が起こっています。今後の化粧品業界も目まぐるしく変化していくでしょう。いかに時代が変化しようとも、化粧品業界においてアルビオンが高級化粧品メーカーとして存在感を示し続けられるよう、また、これまで以上に認知されるよう努めていきたいと思います。

 当社初の女性取締役で創業以来、美容部長として手腕をふるった町田氏は、後進の育成にも力を注ぎ、多くの有能な女性社員を輩出してきました。

 私自身BAからスタートして取締役に就任していますので、後輩のBAの皆さんが憧れる存在となれるよう、夢や希望を持って一生懸命仕事をし続けてもらえるよう、これからも日々精進していきます。「BAでも頑張れば取締役になれる」と少しでも思ってもらえればいいと考えています。

 そして最終的には、3人目の女性取締役を自らの手で育てていきたいです。

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企業紹介

アルビオンは、1956年の創業以来、高級化粧品専門メーカーとして、本物志向に徹し、美しい感動と信頼の輪を世界に広げています。

また、質の高い商品を開発する技術開発力はもちろん、ブランドロイヤルティを大切にした化粧品専門店限定の流通政策、店頭でお客様に夢を与えられるような人材の育成にも力を注いでいます。

http://www.albion.co.jp/

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