第21回 「『いいね』がもたらしたものとは」

 ファッションもビューティも秋モノが動き出す9月後半の3連休、市場調査のために渋谷、青山、銀座をまわって来たのですが、途中、ある百貨店が仕掛けた新しい広告イベントに目がとまりました。

 それは、モデルが着こなす秋ファッションの拡大写真を6点くらい並べて、それぞれの写真の隣に「いいね」ボタンをつくり、電光掲示でカウント数がでるという仕掛けのもので、しばらく立ち止まって見ていたのですが、人通りが多い割に「いいね」を押していく人は少なく、たまに女性同士で指を差しながら「いいね」を押しても、そのまま通り過ぎていくといった様子でした。

 広告戦略としては、若い世代の女性達に対して「いいね」で共感を持たせて、そのブランドやファッションを扱う百貨店に誘導することが狙いだったのだと思いますが、本来、女性がFacebookで「いいね」を押すのは友人や知人の情報に対してお付き合い的な「いいね」だったり、そこにボタンがあるからついでに押してしまう「いいね」がほとんどです。

 なので、公の場で宣伝として公開された情報に対して「いいね」を押してもらう企画には、そもそも無理があったのかもしれません。

 この広告イベントのように、今、ネットの評価「いいね」が企業側の販促に使われることが多くなっていますが、ユーザーは反対の評価も必ずチェックしています。

 雑誌にはいいことしか書いていないので、ネットで評価を調べてから行動するというのがあたり前になった現在、感覚の違う他人の「いい」と「悪い」を併せて読んでしまうと、実際どうしていいかわからなくなってしまう。結局、情報量が増えるだけで「行こう」「買おう」のモチベーションが下がってしまっているというのが、現状ではないでしょうか。

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中村浩子

(株)ヴィーナスプロジェクト代表取締役社長

「JJ」「VERY」等ファッション誌の編集・企画を手がけ、黒田知永子や三浦りさ子等、その時代を代表するタレントをプロデュースし、トレンドを生み出してきた。 現在まで読者モデルを1万人以上発掘しており、現在は女性消費者を取材し続けてきたノウハウを活かし、ファッション・アクセサリー・ビューティに関わる商品開発やイベントを企画、ブランドプロデュース、コンサルティングまで幅広く行っている。

http://www.venus-project.jp/pro/02.html

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