第37回 「1994年の女心」

 中村浩子が体調不良のため、長年コンビを組んで仕事をしている私、相沢正人がピンチヒッターで、このコラムを書かせていただきます。中村ファンの皆様には申し訳ありませんが、ご了承ください。

 さて、ちょっと時間をさかのぼり94年、今から19年前の話です。

 「みなさん、口紅はピンクなんですね。ディオールの475番?」

 場所は神奈川県座間市にある大手家電メーカーの社宅。私と中村は30代の奥様たち5人に集まっていただき聞き取り調査をしていました。もちろん後にVERYとして創刊される主婦雑誌のためのグループインタビューです。

 ファッションについては「服を買う余裕もない」「子育てが大変で身なりをかまっている暇もない」「ほとんどジーンズで過ごしています」など、私たちが期待した答えとは正反対の声が返ってきます。

 ビューティに関しても、ほぼ同様。その後、子育ての苦労話に花が咲き、3時間もすると話題もなくなって、さあ帰ろうと思ったころ、前述の口紅に関する質問が中村から出たのです。

 「そうです。若い頃流行ってたから」「結婚してからは何を買っていいのかわからなくなって」。私たちはようやく光を見つけたような気がしました。

 「何を買っていいかわからない」なら「わかるようにしてあげたら買ってくれるんじゃないの?」

 私たちはJJで女子大生ブームから「茶髪」の流行まで誌面で伝えてきましたが、次のミッションは「30代主婦の雑誌を創れ」というものでした。

 当時売れていた雑誌は「素敵な奥さん」。その企画は「3カ月で10万円貯める!」「懸賞を当てる方法!」のような生活応援もの。

 大手広告代理店に話を聞きに行けば「白物家電か食品メーカーの広告なら入れられると思いますが」。アパレルに行けば「30代のブランドはことごとくダメで......」と言われ。

 ファッション、ビューティを中心とした雑誌作りをしてきた者にとって、どのマーケティング調査も新雑誌を創刊するには芳しい結果ではありませんでした。

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中村浩子

(株)ヴィーナスプロジェクト代表取締役社長

「JJ」「VERY」等ファッション誌の編集・企画を手がけ、黒田知永子や三浦りさ子等、その時代を代表するタレントをプロデュースし、トレンドを生み出してきた。 現在まで読者モデルを1万人以上発掘しており、現在は女性消費者を取材し続けてきたノウハウを活かし、ファッション・アクセサリー・ビューティに関わる商品開発やイベントを企画、ブランドプロデュース、コンサルティングまで幅広く行っている。

http://www.venus-project.jp/pro/02.html

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