第55回 価値観の共有の仕方

【週刊粧業2018年2月12日号5面にて掲載】

 経営者の方から、価値観の共有についての相談を受けることがあります。全社員に自社の価値観が浸透していないのか、足並みが揃っていないように見えるというのです。

 ただ、実際に、価値観を具体的にどのように共有しているのかと経営者の方に質問をしてみると、入社時に伝えたくらいで伝える努力をあまりしていないと答えられます。

 価値観を共有するためには、伝えるだけではなく、どう理解したのか確認をし、前提条件を変えた場合にも、応用が利くかなど確認することが大切です。

 また、抽象度の高い概念の場合は、具体的にどのような行動を指すのかを明らかにすることも必要になります。

 さらに、経営陣が作った価値観を社員に言葉だけで示しても、腑に落ちず、時間が経つにつれ形骸化していってしまいます。そこで、自分達で自社の価値観を言語化していくことも大切になります。

 化粧品通販会社A社は、お客様に寄り添ったサービスをしていきたいと考えていました。しかし、お客様に寄り添ったサービスという言葉だけでは、人によっては値引きをして買いやすくすることであると考えたり、丁寧な接客であると考えたりしていました。そこで、ゼロベースで自社はどのような会社を目指すのか、何をお客様に価値として届けたいのかを社員全員で考えることから始めました。

 同じ想いでも言語化して出てくる言葉に違いがあり、その言葉の意味付けをすることを行うことで、自社が何を大切にし、それは具体的にどのような行動で、どのような行動は絶対にしないというルールが出来上がりました。

 経営陣から与えられた言葉ではなく、自分達で作り上げた価値観だからこそ、納得度が増し、会社全体が同じ方向に向かって動くことを可能としました。

 通販会社B社は、価値観に見合った行動に対し、毎月経営者の方が表彰する取り組みを行っています。どのような行動に対し、表彰するのかを具体的に示すことで、どのような行動が求められているのか、表彰を受けた本人はもちろん、周りのスタッフの気づきにも繋がっています。

 さらに、自分たちの行動を経営者が見ていてくれているということを知ることで、会社への信頼度が増すことにもなり好循環な体制ができています。

 通販会社C社は、毎日朝礼の際に、全員が一言ずつ、嬉しかったことや感謝していることを発表します。全社員が行うため、朝礼が終わるまでに相当な時間がかかります。

 しかし、日々の中の小さな出来事に目を向けて、気づくという行為は、人への感謝の心を育て、強いチームワーク作りに役立っています。
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船生千紗子

(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント

通販に特化した広告代理店を経て、株式会社通販総研に入社。現在、化粧品通販新規参入支援、化粧品通販企業向けに新規顧客獲得、リピート顧客育成による売上アップ支援を行っています。クライアントの強みを伸ばし、着実な成長を促すことをモットーにしています。

https://www.tsuhan-soken.com/

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