【週刊粧業2019年9月9日号4面にて掲載】
実店舗を構える小売業界は、対面の強みを活かし、体験をベースとした取り組みに力を入れていますが、EC・通販業界も同様に体験できる場を作る企業が増えてきています。
これは、体験できる場を作ることで、広告に頼らない新規客の獲得を可能とし、さらに既存客との関わり合いを強くすることにもつながっています。いつでも、どこでも商品が簡単に手に入る『便利さ』というEC・通販の強みは今では当たり前となり、『便利さ』だけでは他社と差別化することはできず、事業を成功させることが難しくなっていることの現れでしょう。
通販企業A社は、商業施設内のイベントスペースを使って、期間限定で対面販売を行っています。
通りかかる買い物客に試飲を促し、試飲をしている間、スタッフが商品の特徴やどのような人に飲んでもらいたい商品であるか等詳しく説明をします。最後には、飲み続けることの大切さと、『今、定期に入ると○○をプレゼントします』とクロージングをすることも忘れません。
広告のように一度に多くの新規客を獲得することはできませんが、商品を体験して購入したお客様の継続率が高いようで、重要な新規客獲得の取り組みへとつながっています。
通販企業B社も同様に期間限定の対面販売を行っています。
テスターを自由に試してもらい、今まで自社を知らなかった、または知っていたけど、体験せずに購入するのは不安というお客様との出会いの場として活用しています。さらに、その場でLINE登録するとサンプルをプレゼントという取り組みを行うことで、購入には至らなかった見込み客への情報発信に役立てています。
通販企業C社は、化粧品の使い方セミナーを既存客向けに開催し、商品の正しい使い方をお客様に直接お伝えする場を設けています。
同梱物やお電話でどんなにしっかりと使い方を伝えていても、実際に見て体験するのでは理解度に大きな差があります。お客様からも「1度に使う量がこんない多いとは初めて知った」「何故、時間をかけてお手入れする必要があるのか理解できた」という声が聞かれ、対面ならではの良さを実感します。
EC・通販企業は今までのように非対面に徹した接客だけでは、事業を成功させていくことが難しくなっています。広告活用以外にいかにして新規のお客様と出会うか、既存客に自社、商品を深く理解してもらいファンになってもらうかを考えていくと、体験という場づくりが解決策の一つとして役立つのではないでしょうか?