第11回 「化粧品専門店に意欲」(ウエルシアホールディングス 池野隆光会長)

【週刊粧業2020年2月10日号12面にて掲載】

 ウエルシアホールディングスは、合併に次ぐ合併の繰り返しで成長してきた。同社の前身は、創業者である故 鈴木孝之前会長が1965年、埼玉県春日部市に開業した小さな薬局がスタートである。

 その後「グリーンクロス」を設立し、「コア」と合併してドラッグストア「グリーンクロス・コア」を誕生させた。さらに高田薬局、寺島薬局などを次々と傘下に収めて社名も「ウエルシアホールディングス」に改め現在に至っている。

 まだ鈴木さんが薬局を経営していた当時、町内会の会長として旅行会を主催した。貸し切った帰りのバス車内を彼が点検していると、近くのドラッグストアの店名が記された袋があった。

 「町内会の行事に熱心に取り組んでいましたが、人々が買物をするのは私のところではなく、その大きな店だったのです。がっかりしました。それならば自分もドラッグストアに挑戦しようと決意しました」。

 こうした体験もあって鈴木さんは、自力出店に加えM&Aを繰り返し、ウエルシア発展の礎を築いた。

 2002年には、池野隆光氏が経営していた「池野ドラッグ」を吸収合併した。池野ドラッグは当時それほど店数が多くなかったが、鈴木社長(当時)は池野氏を副社長兼商品本部長に抜擢した。

 「当時のグリーンクロス・コアは、非常に風通しがよい社風でした。いまもその伝統は根強く残っています。その人がどの企業の出身なのかは一切問題にしません。鈴木社長は、実力のある人材をどんどん抜擢して活躍の場を与えました。それが会社を発展させた最大の原動力になりました」と池野さんは述懐する。

 残念ながら鈴木さんはその後病に倒れ、2014年に死去された。私は病重篤にも関わらず出社されていた鈴木さんにお会いした。それが彼との最後のインタビューとなった。

 「鈴木社長。いかがですか。頑張ってください」

 「ありがとう。しかし会社の今後が心配で心配で、頭から離れないのですよ」

 鈴木さんは、病院に見舞いに訪れたイオンの岡田元也社長に、「ウエルシアをイオングループに託します。よろしくお願いします」と何度も頭を下げたという。

 いまウエルシアはイオングループの中で最も収益性の高い企業としてグループの業績を牽引している。

 「鈴木さんは、調剤併設、深夜営業、カウンセリング販売というウエルシアの基本原則を貫き通しました。M&Aで傘下に収めた企業も、このウエルシア方式を導入することで業績が向上しています」

 同社は今、新たな成長分野として化粧品専門店の展開に乗り出している。岡山県を中心に1都2府13県で化粧品専門店を展開する「MASAYA」を完全子会社化した。

 続いて海外のラグジュアリーブランドを中心としたセミセルフ業態の「ナルシス」を4店連続オープンしている。さらにフランスのボタニカル化粧品「イヴ・ロシェ」を展開するため、イオンと合弁で「イオンレーヴコスメ」を設立して全国展開をめざしている。

 池野会長は「化粧品は年齢を問わないカテゴリーで、高齢社会でもマーケットは拡大すると推測しています。今後もカバー領域を広げてビューティケアのあらゆるニーズに対応できるようにしていきたい」と意欲を見せる。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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