第5回 異業種コラボ

【週刊粧業2016年2月8日号12面にて掲載】

 最近よくみかけるのが、化粧品企業と化粧品を本業としない異業種企業(食品や家電、ホテルなど)とのコラボです。

 一口に『異業種コラボ』といっても、共同開発と共同販促ではその目的もかかるコストも違いますし、その連携度合いもゆるやかなものから契約書を交わすものまで多種多様です。

 異業種コラボの主な目的としては、①顧客接点を増やす、②自社の強みを補完する、③相乗効果で新たな価値を創造する、などが挙げられます。こうした効果が比較的安いコストで得られるとして、近年多くのコラボが生まれています。

■顧客接点の拡大

 例えば、ポーラは近年、訪問やポスティングが難しくなっていることを踏まえ、自動車ディーラーやカラオケ店、結婚式場、証券会社といった様々な業種との連携を図っています。これにより、従来のチャネルやアプローチでは難しかった顧客との接点を増やし、実際に体感してもらうことでブランドの認知拡大を図っています。

■自社の強みの補完

 また、資生堂はパナソニックやMTGといった美容機器メーカーとコラボしています。資生堂にとっては、美容機器と組み合わせて訴求することでより高い効果実感につなげられるメリットがあります。一方、美容機器メーカーにとっても、未利用者に自社の美容機器を使ってもらう絶好の機会となっています。

■新しい価値の創造

 また、横浜ロイヤルパークホテルはサボンとコラボし、アメニティやアロマに同社製品を採用した宿泊プランを現在開催中です。ホテルの非日常空間と同ブランド製品がマッチすることで、独自の世界観を存分に体感してもらうことができます。

■意図しない効果

 以上のようなメリットに加えて、さらに意図しない効果も期待できます。それは、コラボレーションの意外性が話題を呼び、メディアへの露出が高まることです。

 例えば、資生堂×三菱鉛筆、ポーラ×カゴメ、ロクシタン×ピエール・エルメといったコラボは、両社になんの関係性も想像できないことから逆に興味をそそられ、メディアに取り上げられます。もちろん無料です。その効果を通常の宣伝広告費に換算すると、億単位の効果が得られたものもあります。

 ただ近年は、様々な業界で異業種コラボが盛んにみられるようになったため、単なる意外性だけでは十分でなく、「面白い」と思ってもらえるものでなければなかなか取り上げてもらえません。特にいまは、SNSが強い影響力を持っている時代です。「面白い」コラボを話題・共有・拡散したくなるような意図的な「仕掛け」が必要になっています。

 異業種コラボのなかには、客層の違いから期待した成果が得られない場合もありますが、コストは比較的低い分、試してみる価値は十分あると思います。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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