第9回 皮膚常在菌(美肌菌)

【週刊粧業2016年6月13日号4面にて掲載】

 近年、『皮膚常在菌(美肌菌)』という言葉がテレビや雑誌で紹介される機会が増えてきました。

 美肌菌とは皮膚常在菌の一種「表皮ブドウ球菌」(肌の潤いや弱酸性を保つのに必要なグリセリンや有機酸を産生する菌)のことで、美肌はもちろんのこと、アトピー性皮膚炎やニキビ治療にもとても深い関わりがあります。そんな皮膚常在菌(美肌菌)に着目したビジネスが徐々に注目を集めています。

■新ビジネスの登場

 そのひとつが、美肌菌バンクサポートセンターが2013年より提供している「美肌フローラ」です。これは、顔の皮膚から美肌菌を採取した後、培養・増殖・凍結保存し、肌に戻すというもの。美肌菌は半永久的に凍結可能なため、5年後、10年後も自身にとって最適な美肌菌を利用することができ、皮膚常在菌バランスを良好な状態に保つことができるそうです。

 もうひとつ、美容外科の東京イセアクリニックが2015年より提供しているのが、世界初の「美肌菌ドック」です。これは皮膚常在菌のうち、肌質に与える影響が大きいとされる三種の菌(表皮ブドウ球菌、アクネ菌、黄色ブドウ球菌)の量とバランスを、130項目以上の問診と21種類の医学検査を通じて調べ、個々人により異なる肌質とそれにあった化粧品、必要なケア方法を明確化するというものです。

 ただ、残念なことにどちらのサービスも一般の人にとってはまだまだ高額です。

■化粧品でも注目

 また、近年は化粧品でも皮膚常在菌(美肌菌)に着目した商品が増えてきています。そのひとつとして、「HANAオーガニック」が挙げられます。同ブランドは、肌の再生力と免疫力を弱めてしまう原因のひとつとして皮膚常在菌のバランスの乱れに着目。オーガニック抽出成分を配合することで、肌本来の力を取り戻すことをコンセプトにしています。

 もうひとつ、オブ・コスメティックスが最近発売したのが、頭皮の皮膚常在菌に着目した頭皮ケアオイルです。同商品は頭皮の常在菌バランスを整える成分としてグルコオリゴ糖を配合することで、炎症などを防ぎ、健康な髪を育むことができるとしています。

 皮膚常在菌はシミやシワ、たるみなどとの関連性も深いため、今後、美肌菌に着目した美白化粧品やエイジングケア化粧品も増えてくるかもしれません。

 ただ、皮膚常在菌は肉眼では直接確認できないため、その菌状態をいかに「見える化」できるかが、こうした化粧品の成功の鍵となるでしょう。

 これまで様々な化粧品やスキンケア方法を試してもなかなか満足を得られない人にとっては、まず自身の肌(菌)の状態や特徴を知ることが美肌への最短の近道となるかもしれません。気になった方はぜひ上記の「菌活」を試してみてはいかがでしょうか?
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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