【週刊粧業2016年07月18日号5面にて掲載】
2015年度に日本に訪れた外国人の数は前年度比45%増となり、初めて2000万人を突破しました。化粧品市場においてもインバウンドに対する関心が高まっていますが、まだまだゴールデンルートに需要が集中し、地方都市への誘導が課題に挙げられています。こうしたなか近年(再)注目を浴びているのが、『ご当地コスメ』です。
ご当地コスメは、狭義には「①地域の活性化を目的として、②地域資源を活かして、③地元の企業が生産し、④地域限定で販売されている化粧品」を指しますが、広義にはその一部だけを指す場合もあります。
ご当地コスメが話題になったのは、今から10年くらい前のことです。資生堂アメニティグッズが地方の観光協会などからの要請を受けて、日本各地の花などの香りをベースにしたフレグランスを10種類以上開発し、お土産として親しまれるようになりました。
とはいえ、ご当地コスメの多くは少量生産で販路も空港や宿泊施設、土産物店などに限られているうえ、広告予算もないため、利益はあまり見込めないのが実情です。このため化粧品業界のなかでは従来、ご当地コスメを地域支援としては取り組んでも、ビジネスとしてはあまり位置付けていませんでした。
しかし近年、インターネットの普及により販路は全国、世界に広がりました。また、6次産業化法の成立やふるさと納税の返礼品への注目、さらには外国人観光客の急増やオーガニック・ナチュラルコスメブームを背景とし、ご当地コスメに積極的に取り組む企業・団体が増えています。
例えば北海道コスメ協会は、2009年から道産の昆布や鮭などを活用した化粧品を都心のアンテナショップや物産展などで展開しブランド化を進めています。また、こうした需要の受け皿として、化粧品原料・OEMメーカーのホシケミカルズも全国30カ所以上の県産素材を取り揃え、同事業の強化を図っています。
ご当地コスメの課題としては、やはり限られた予算内での販売方法やPR活動が挙げられるでしょう。また、全国各地に必ずひとつはご当地コスメが存在している現状では、単に地域特産の原料を配合しただけでは訴求力は弱いでしょう。
抗老化や美白といった機能性ニーズに対応したエビデンスデータや、伊勢神宮の『お浄め』をテーマにした「おいせさん」のような、その地域の歴史や物語性に根差したオリジナリティが不可欠になってくると思います。
また、インバウンドのモノ消費からコト消費への移行にも対応するため、エステやスパ、ハンドメイドなどの体験型消費への取り組みも重要になってくるのではないでしょうか。
これから夏休みで地方に行かれる方は、食事や観光だけでなく、ぜひご当地コスメも楽しんでみてはいかがでしょうか。