第11回 ヘアカラートリートメント

【週刊粧業2016年08月08日号5面にて掲載】

 ヘアカラー市場の伸び悩みが指摘されて久しいですが、2015年度のヘアカラートリートメント市場は前年度比7%増となっており、好調な推移が続いています。(弊社調べ)

■人気の背景

 従来のヘアカラーは「髪が痛む」や「面倒」、「刺激臭」といったマイナスイメージを持たれがちでしたが、カラートリートメントはこれらの不満点の解消を前面に打ち出し、①髪や頭皮に優しい、②簡単・手軽、③臭わない(または香りがよい)などをコンセプトに市場を拡大してきました。

 なかでも、2009年にピュールが発売した「利尻ヘアカラートリートメント」は、『ダメージのないヘアカラー』というコンセプトで一躍大ヒットし、同市場を約4倍に拡大しました。以降、ドクターシーラボやディーエイチシーなどの通販系企業が相次いで参入を果たし、市場の定着化につながりました。

■現状の課題

 とはいえ、カラートリートメントがヘアカラー市場全体に占める割合はまだ1割強に過ぎません。

 その理由としては、商品カテゴリーそのものの認知度がまだまだ低く、利用者が限られていることが挙げられます。実際、弊社が以前に行った調査によれば、40~60代の一般女性のうち、カラートリートメントを使用したことのある人は2割程度にとどまっています。

 また、カラートリートメントは永久染毛剤ではないため、染め上がりや色持ちなどの点では、美容室での施術や従来からあるクリームや泡などのヘアカラー剤に劣ります。このため、カラートリートメントだけで白髪ケアを行っている人は少数派で、多くの女性は本格的なカラーリングと併用しています。

■「つなぎ役」の可能性

 ただ、こうした現状を必ずしも悲観的にとらえる必要はありません。確かに、カラートリートメントを従来のヘアカラーのアンチテーゼとしてのみ位置づけるなら、カラー機能で劣るカラートリートメント市場は今後それほど大きな成長は期待できないでしょう。

 しかし、そうしたデメリット(弱み)を十分に認識しつつ、本格的なカラーリングまでの「つなぎ役」として割り切るなら、カラートリートメントの弱みを逆に相対化することができますし、本格的なカラーリングとも十分に共存が可能です。

 例えば、ヘアカラー業界最大手のホーユーは少し前まで、従来のヘアカラーの不満点を認めることになるカラートリートメントの扱いには慎重で、通販ブランドで棲み分けて展開していました。しかし今年2月には、「ビゲン」から初のカラートリートメントを発売し、「つなぎ役」として明確に打ち出しています。

 これにより、まだ7割も残っているとされる未使用者の獲得を図り、ブランド全体の底上げを図る狙いです。このことが、ひいては市場全体の活性化につながっていくでしょう。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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