【週刊粧業2016年11月14日号11面にて掲載】
近年、テレビや雑誌などで『炭酸』が美容や健康に良いということが取り上げられ、化粧品をはじめ炭酸訴求商品が増えています。
■炭酸の魅力
そもそも炭酸とは、二酸化炭素が水に溶けた状態を指します。炭酸は皮膚に吸収されやすく、血中濃度が上がると血管を拡張する働きがあります。
これにより血行が促進され、肌のターンオーバーの活性化につながるため、老廃物の排出がスムーズになり、乾燥やくすみといったさまざまな肌悩みを解消するといわれています。また、弱酸性の性質が肌のphと近く、表面をすべすべにするアストリンゼン効果(収斂作用)も期待されています。
■増える炭酸コスメ
美容業界においては当初、エステサロンなどで美容感度の高い人向けの炭酸ジェルパックが人気を集めていました。その後、2007年に花王が「エスト アクティベートサーキュレーター」を発売すると大ヒット。以降、化粧品市場でも炭酸コスメに対する注目度が高まり、参入企業の増加とともに、一般女性の間でも次第に浸透するようになりました。
また、アイテムの幅も広がり、ジェルパックや洗顔料のほかに、化粧水や美容液などさまざまなアイテムに炭酸成分が配合されるようになっています。さらには、炭酸ガスの人気がヘアケア分野にも波及し、炭酸を使った頭皮ケアアイテムも増えています。
■市場の拡大要因
弊社の調査によれば、炭酸コスメ市場(マス用のスキンケアのみを対象)は2010年時点ではわずか24億円でしたが、その後関連アイテムが急速に増えたことにより、2015年には約8倍の200億円規模にまで拡大しています。
このように炭酸コスメが広く受け入れられるようになった理由としては、①炭酸が消費者にとって身近で馴染み深いこと、②炭酸の美容効果・作用が明確であること、が挙げられます。また、③メーカーにとっては炭酸によるマッサージ効果やパック効果などを複合機能として訴求しやすく、近年の消費者の多機能ニーズに合致していることが挙げられます。
さらには、④商品により程度の差はあるものの、炭酸を体感しやすいことも重要な要素となっています。特に洗顔料については、炭酸による濃密で独特な感触の泡が毛穴の奥の汚れまで落とす感覚にマッチしている点が、人気の一因にもなっています。
■炭酸から水素へ?
美容業界ではこの1年あまり、『炭酸』の次の「美容分子」として『水素』に注目が集まっています。ただ、水素の効果・効能に関する科学的根拠については諸説あるうえ、安定供給する技術的な難しさもあります。
このため、水素コスメブームが到来するかは未知数ですが、水素は目には見えないうえ体感もできないため、炭酸コスメ以上に売るための「工夫」が求められることは確かでしょう。