第21回 PR(プレスリリース)

【週刊粧業2017年06月12日号5面にて掲載】

 今回は、化粧品企業の『PR(プレスリリース)』活動について考えてみたいと思います。

 『PR』は「広告」とは異なり、新聞や雑誌などの各種媒体に「記事」や「ニュース」として取り上げてもらえるように取り組むことを指します。その最大のメリットは、広告であれば莫大にかかる費用が無料になること。また、広告よりも読者の目に留まりやすく、信頼性が高い点も魅力のひとつです。

 一方、デメリットとしては、発信した情報が必ずしも発信側の望むタイミングや内容で取り上げられるとは限らない点が挙げられます。また、広告費が無料になるとはいえ、それに対応できる組織や人材は必ず必要になります。

 このため、PRの重要性は十分に認識していても、実際には「直接的な効果が見えにくい」「社内の人手が足りない」などという理由で取り組めていない企業はまだまだ多いようです。

 しかし、飽和する市場のなかで好調を維持している企業の共通点のひとつに、このPRの上手さを挙げても過言ではないでしょう。

 例えば、ポーラが2012年より発表している『美肌県グランプリ』の調査結果は、「美肌」と「県民性」を組み合わせることでより多くの人が関心を持ちやすく、毎年さまざまなメディアで取り上げられています。

 そうしたPRのコツも重要なのですが、ここで留意すべきなのは、このPRを通じて同調査を支える同社のスキンチェックとその解析技術「アペックス・アイ」も一緒に宣伝できている点です。

 つまり同社は、自社が誇る研究開発力を一般の人が興味を持つ形に「翻訳」し発信することで、メディアに無料で紹介してもらい、自社のブランディングに役立てています。

 また、ポーラと同じグループ企業に属し躍進を続けるディセンシアもPRの上手さという点で注目すべきです。

 同社は年に20本前後のプレスリリースを配信していますが、これは敏感肌コスメを展開する競合企業と比較してもかなり数が多いといえます。その内容は、敏感肌に直結したものもありますが、「梅雨時期の肌荒れ」など、記事化されやすいように季節性を意識した調査も少なくありません。

 加えて、メディア関係者やインフルエンサーを招いた発表会を頻繁に開催しているほか、以前にこのコラムでも紹介した『異業種コラボ』(第5回)にも積極的に取り組み、話題の喚起を図っています。そして、各種メディアで紹介されると、同社はその実績を自社のHPやLPなどに掲載することで一定の販促効果をあげています。

 このように、競合企業のPR活動に少し目を向けてみると、外部企業に頼らずともすぐに実践できて参考にすべき点が数多くあります。特に大手企業のように巨大な広告予算をもたない企業にとっては、こうしたPR活動に本腰を入れて取り組むことが大切です。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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