【週刊粧業2017年7月17日号5面にて掲載】
今回取り上げるテーマは『ふきとり化粧水』です。ふきとり化粧水とは、主に化粧コットンを併用し、通常のクレンジングや洗顔料では落ちにくい古い角質や毛穴の汚れをふきとって除去するアイテムを指します。
弊社の調査によれば、2016年度のふきとり化粧水の市場規模は前年度比4.7%増の178億円となっています。同市場は、化粧水全体の6%程度を占めるにすぎませんが、3年前と比べると約13%伸びており、成長市場となっています。
とはいうものの、同市場はほんの数年前まで、女性のスキンケアが簡素化するにつれ縮小傾向にありました。にもかかわらず、近年伸長しているのはなぜでしょうか。
■安心感と効果実感
従来市場を牽引してきた資生堂の「オイデルミン」は140年、ナリス化粧品の「コンク」は80年、外資系の「クリニーク」は40年と、どれも長い歴史を持つベストセラー商品となっています。そうした歴史的な安心感に加えて、ふきとり化粧水には「古い角質の蓄積→ごわつき・くすみの原因→除去→成分の浸透向上により効果アップ」という理論的にも確立された安心感があります。
また、汚れがコットンに付着し目に見える点も、効果を実感するうえで重要な要素となっています。特に、ここ数年でカウンセリング系ブランドに客足が戻ってきたことにより、ちょっとしたひと手間をかけることで確かな効果が得られるという啓発活動を、参入各社がしっかり行えるようになった影響も大きいと思います。
■除去から底上げへ
もうひとつ最近の傾向として挙げられるのが、美容意識の高い女性を中心に、スキンケアのトレンドが特定の肌悩みを個々に解決するのではなく、肌を土台から立て直そうとする意識に変わってきている点です。これに伴い、ふきとり化粧水を使用する目的も、「角質や汚れの除去」から「肌の底上げ」のためへと変化してきています。
■顧客の裾野拡大
また近年は、ふきとり化粧水のユーザーが美容意識の高い女性からより一般の女性へと広がりをみせています。その背景のひとつには、昨今のスキンケアの多機能化のトレンドが挙げられ、「ふきとり+α(毛穴の引き締め、保湿など)」のニーズがセルフ・通販チャネルで高まりつつあります。
さらに同アイテムは、海外でも注目を浴びています。なかでも、ドクターシーラボの「ラボラボ」は中国の観光客の間で爆発的なヒットを記録しています。また、これに関連して、化粧水を節約できるという日本とは少し異なる理由で化粧コットンがインバウンドの対象になっています。
このように顧客の裾野が徐々に広がってきているとはいえ、まだまだ多くの未使用者がいます。このため今後、開拓の余地は十分にありそうで、市場の成長が期待されます。