第23回 機能性表示食品

【週刊粧業2017年11月13日号6面にて掲載】

 今回取り上げるテーマは『機能性表示食品』制度です。

■制度の概要

 同制度は2015年4月に施行された制度で、消費者の自主的かつ合理的な商品選択の機会確保の促進を目的としています。特定保健用食品(トクホ)のように、届出された商品の安全性や健康効果を国が審査するわけではなく、あくまで事業者の責任において、科学的根拠に基づいて機能性を表示することができます。

 開始から2年半が経過していますが、届出が受理された製品はすでに1000件を超え、1991年に始まったトクホの許可件数と同規模にまで増えています。

 また、参入企業も300社以上にのぼり、食品・飲料系企業をはじめ、製薬系企業や原料・OEM系企業など多種多様な企業が参入を果たしています。これに伴い、機能性表示食品の2016年度の市場規模は前年度比3倍強の851億円となり、2017年度も約2倍に拡大する見通しです。

■美肌・肌の保湿

 では、同制度のもとで具体的にどのようなヘルスクレーム(訴求)が可能なのでしょうか? 品目数が多いものとしては「脂肪・糖の吸収抑制」や「整腸」が挙げられますが、同制度ではいわゆる「美肌・肌の保湿」を謳うことも可能になっており、すでに100件近くが受理されています。

 具体的にみてみると、主な参入企業としてはキユーピーやアサヒグループ食品、森下仁丹などが挙げられ、商材はサプリメントを中心に、ドリンクやスープもあります。

 成分としてはヒアルロン酸とグルコシルセラミドを配合したものが大半ですが、一部グルコサミンやアスタキサンチンを配合したものもあります。また訴求内容としては、①肌の水分量を保持・増加させる、②肌の保湿力(バリア機能)を高める、③肌の乾燥を緩和し肌の調子を整える、などを謳っています。

■化粧品企業の動向

 化粧品を主に展開する企業で「美肌・肌の保湿」を謳った機能性表示食品を展開しているのは、資生堂や富士フイルム、銀座ステファニー化粧品などの一部企業に限られています。しかし今後、同制度を活用して参入する企業はさらに増えてくるでしょう。

 これまで多くの化粧品企業が「内外美容」や「インナービューティ」に取り組んできましたが、成功事例はあまり多くありません。その理由のひとつとして、これまでの食品では美容効果を明確に訴求することができず、化粧品との相乗効果を打ち出しにくかったことが挙げられます。

 しかし、同制度を活用すれば「肌の保湿」などと明記することが可能になり、これまで以上にシナジーが期待できます。また、「肌の保湿」以外にも「睡眠改善」なども併せて訴求することで、化粧品だけでは不可能だった新しい価値も提供できるかもしれません。今後の動向に要注目です。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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