【週刊粧業2018年05月21日号12面にて掲載】
今回取り上げるキーワードは、『J₋Beauty』(以下、JB)です。
『JB』とは、日本の化粧品や日本人女性の美容習慣などを表す言葉として、主に海外で使用されています。
もともとはユニークかつオリジナリティに溢れる韓国の化粧品に対する人気を示す言葉として『K₋Beauty』(以下、KB)が定着していましたが、近年は海外でも日本の化粧品に対する人気が高まっており、しばしば『KB』と対比的に『JB』が使用されています。また、韓国コスメブームの次には日本コスメブームが到来するのではないかと予測する人もいます。
『JB』に対する注目の背景としては、訪日外国人の増加にみられるように、世界的な日本ブームの影響が挙げられます。特に、円安やアジアの経済成長を追い風に、従来は憧憬の対象でしかなかった日本コスメに手が届くようになったことも一因です。
また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、日本の化粧品メーカーもインバウンド需要を取り込もうとグローバルでのブランディングに注力していることが寄与しています。
さらには先般、韓国の大手企業の化粧品に基準を上回る重金属が検出されたことも、少なからず影響しているようです。これまでも日本企業が手掛ける化粧品の安全性の高さには定評がありましたが、ここにきて韓国コスメの安全性に疑問符が投げられたことが、改めて『JB』に目を向ける契機になっています。
では、海外から見た『JB』の注目ポイントとは何でしょうか?
ひとつは、日本の伝統的な文化・伝承の素材をモチーフとしたコンセプトやパッケージデザインなどに対する関心や憧れです。例えば、ディーフィットの「まかないこすめ」や上羽絵惣の「胡粉ネイル」などは、訪日外国人だけでなく海外でも人気となっています。
もうひとつは、日本企業が有している化粧品に関する最先端の知見と技術、そして世界一厳しい目を持つとされる日本人女性の感性です。例えば、今年1月より資生堂がグローバルで展開している「エッセンシャルイネルジャ」は、「肌感度」というアプローチや楽茶碗から着想を得たというデザインに『JB』の要素がふんだんに盛り込まれています。
このように、日本企業にとっては『JB』への世界的な関心が高まっている今がまさに好機で、今後はグローバル展開にもより一層のスピード感が求められます。
従来は、一部の大手企業を除けば日本でしっかりブランディングを行った後、海外に進出することが一般的でした。しかし今後は、ローレルの「shiro」のように比較的早い段階から海外に進出するケースや、資生堂の「WASO」のように日本より先に海外に導入するケースも増えてくるでしょう。
東京オリンピック・パラリンピックの開催まであと2年、日本企業のグローバルでの展開が楽しみです。