【週刊粧業2015年11月30日号4面にて掲載】
最近、50代女性と仕事やプライベートでもお話する機会が増えましたが、そこで多くの女性が外見面で悩んでいるのが意外にも「ファッション」についてでした。
もちろん、50代と一口に言っても、50代前半か後半か、ライフスタイル、もしくは有職者か未就労者かによってそのレベルは人によって差異はありますが、まとめると皆さん口をそろえて「カジュアル下手」を自認する人が多いのが印象的です。
人に会う時は「きちんと」「清潔感」を与える印象を大事にしてきて、かつオンとオフのメリハリをつけてきた世代です。仕事や行事に参加する時など、いわゆるオフィシャルのおしゃれは心得たものですが、とたんにカジュアルなシーンとなるとその「引き算」具合がわからないという人は多いようです。
よくよく話を聞いていくと、その「引き算」「抜け感」を上手に演出したいのは断然、同性(女性)の友達と会う時だそうで、「さりげなくおしゃれに見せるのが難しい」(55歳・専業主婦)、「相手が何気ないリラックスしたおしゃれな装いで、こっちが力みすぎた時はハズした!って思う」(50歳・会社員)との声も聞かれます。ゆえに女性ファッション誌などではこぞって「エフォートレス(抜け感)」なるキーワードが躍り、支持されているのもうなずけます。
先日会ったある50代前半の美容編集者も同様に「最近は仕事で打合せでもあえてカジュアルな素材を取り入れながら相手に失礼な印象を与えないきちんと感を出せるか? ということに挑戦している」と言っていたのが印象的でした。
彼女曰く、かための打合せ等は場合によってはフォーマルによった服装で出向きますが、インタビューなど、相手や自身をリラックスさせたい時は、「どこか少し力を抜いた」「きちんとカジュアル」を心掛けているそうですが、「そのバランスはかなり難しい」と話します。
編集者というトレンドの第一線に身を置く彼女でさえ、「難しい」のですから一般的にはその「カジュアルな壁」のハードルがいかに低くないかがうかがえます。
これらの話を聞くと、きちんと見せたいもののさりげなく力を抜いたカジュアルダウンこそがおしゃれの代名詞のようなものになってきているようです。
しかし、そこには、自分たちを魅力的に見せたい想いがあるのはもちろんですが、単に女性達が「自己をアピール」することだけが目的なのではなく、一緒にいる人との同調や相手に対する配慮や気遣いといったものがうかがえます。
ここに、円滑な人間関係を念頭に置くコミュニケーションを重視する世代ならではの意識が働き「エフォートレス感」が重視される所以となっているのでしょう。