【週刊粧業2016年3月28日号5面にて掲載】
最近、コンサルティングをしていて気づく事ですが、「PR」と「販促」の肩書を兼ねている広報担当者の名刺を何度か見かけるようになりました。
ある化粧品ブランドの経営者は「かつてはPRの仕事は女性誌の美容編集者、美容ライターに自社商品をプロモートして記事掲載につなげることに没頭してもらえばよかったが、今は一般消費者との接点を増やすことも広報担当のミッションとしている」と話します。
ある企業の広報担当者は「会社の方針で、PRだけでなく販売促進という、今までは別の部署が行っていたことを兼任するようになった」とも話します。
これも美容業界におけるマーケティングの捉え方が新たな段階に入った証かと思います。
ネットやSNSの台頭で、かつてのマスメディアの影響力が分散している現在。そういった効果測定ができにくい今の時代があえてPR・広報という領域を過大解釈させざるを得ないという状況を作りだしているのだと思います。
化粧品業界にとって雑誌掲載というPR手法は長年マーケティング活動の主流といえ、企業は売上向上のためにPRにコストやマンパワーを注力してきた歴史があります。
しかしながら、昨今ではそうしたマスメディアを駆使した広報手法と同時に、やはり個人が情報を発信するブログやツイッター等のSNSも新たな「個人所有メディア」としてけして無視はできず、個人メディアをどう活用するか? も重要な施策となってきます。となると、「ツイッターやインスタでの拡散」「有力ブロガーへのアプローチ」といったSNS向け施策に注力している企業、担当者も多い事でしょう。
実際、私どもにもSNSのご相談や依頼も増えていますが、その際にオンライン上での「情報発信」のみにとどまらず、ブランドの良さを伝える場=リアルの体感の場を提供することを提案しています。やはり、肌をはじめとする五感で良さを実感する化粧品の特性を活かすならば、リアルでの共感は不可欠です。これまでは「プレス発表会」なる場で、メディアがその立場を担い、代弁してくれていましたが、今では一般消費者向けにも同様の『オフライン体感』は重要と捉え、弊社でも運営を行い依頼も増えてきています。
とはいえ、個人メディアの増加に伴い、マスメディアへの信頼性という価値が見直されているのも事実です。今のような消費者が影響を受ける『メディア』なるものが多角化した新時代において、ブランド価値を上げながら、いかに一般消費者への接点を設けるか?――「マス」と「個」の両メディアの注力バランス感覚と同時併走という新たな広報スタイルが求められているのは確実です。