第20回 成熟世代の「プチ起業」にみるバランス型自己実現

【週刊粧業2016年4月25日号12面にて掲載】

 定年退職後に起業する男性が増えているそうです。青年・壮年層に比較してこの世代の起業は「自分の好きな事で時間と身体を使いたい」「地域に何らかの形で貢献したい」といった『稼ぐ』ことよりも、『自己実現』を目的としたものが多いのも特徴のようです。

 女性にも同様の傾向が見られます。男性は、退職後が区切りとして多いですが、女性の場合は、「子供の独立」の時期でもある50代前後が大きなターニングポイントの一つのようです。

 子供と同時に自身の「独立」を考える女性も多いのです。「独立」といっても、「資金を調達してオフィスや店舗を借りて起業する」といった大々的なものではなく、あくまでも「家庭」や「家族」が中心にあり、その関係性を上手に保ちながら、自身のアイデンティティを見つめ直し人生を再スタートさせたいと願う『バランス型』の「プチ起業」スタイルが主流なのです。

 経済状況や自身の経験・スキルを客観的に捉え、身の丈に合った「プチ起業」は女性ならではの自己実現の形といえるでしょう。

 心理カウンセリングの資格を取り、会社員時代の管理職経験を活かした「会社の人間関係」に関するセミナーを自宅で開講している50代前半の女性。自営業の家業手伝いを長らくやり接客に自信がついたので、自分の世界で今度は店を切り盛りしたいとカフェを開業する女性。

 普段から興味があって勉強していた美容やダイエットの知識を活かして美容サロンをオープンする40代後半の女性……などなど、肩ひじ張らず、プライベートの延長線上で「楽しむ」ことがキーワードとなっているのです。

 中には会社に再就職する道を選ぶ人もいますが、「若い人にけむたがられて慣れない仕事をするよりはよほど気楽」といった意見にも大いにうなずいてしまいます。

 こうした「プチ起業」の願望には、「好きなことで時間を使いたい」「自分を認められたい」といった自己実現、自己承認欲求がベースとなっていますが、それ以外に要となっているのが「他者とのコミュニティを持ちたい」といった「絆(きずな)」の要素です。他者とのふれあいにより刺激を受けたり影響しあうという「絆」が女性にとっては不可欠な要素なのです。

 もちろん、利益が出て事業として成功するかは別の話であり、現実的には一家の家計を担うのはあくまでも夫の収入、といった人も少なくありません。

 とはいえ、少子高齢化を迎えた社会で、こうした成熟世代の経験やスキルが他者との絆を作り、自身の人生や世の中を質的に豊かにするのであれば、成熟世代のプチ起業は一つの良い選択肢だと思いますし、またそれに向けての企業のビジネスチャンスも拡がっていくのではないでしょうか。
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松下令子

美容専門PR・販促支援会社 (株)DSプロモーション 代表取締役

「顧客と一緒に汗を流す」をモットーにPR・販促事業を展開。 医療機関テスター設置活動など独自の販促支援事業が好評。 「当連載では、私たちが業務を通じて得た“今日から試せる”  PR・販促施策のヒントをあらゆる角度から提案します」

http://www.ds-p.net/

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