【週刊粧業2017年9月25日号11面にて掲載】
今や欠かせなくなってきたブランドや商品を広める手段としてのSNS。一般消費者が「デジタルインフルエンサー」という立場になり、あらゆる商品やイベントを投稿し拡散していくというスタイルがPR手段として定着しています。
その一方で、「コスメのみならずファッション、食品などジャンルを問わず、SNSのネタ目的でイベントを渡り歩き、商品にさほど関心を示さないインスタグラマーもいて、イベント招致も見極めが必要になってきた」というブランド側からの声を最近よく聞きます。
あるいは、「明らかにサンプルなどの特典獲得のためだけに参加して拡散や購入は全く望めない参加者もいる」といういわゆる「サンプラー」問題は、PR・販促施策の際には、以前より課題として挙げられていました。
現在のPR環境は極端な話、その気になれば誰もが「インフルエンサー」として発信者になれる時代です。とかく情報が多い故に、信用のおけるプロによる記事を掲載する雑誌等の紙媒体が一部のブランドや一般消費者側にとって見直されつつあるというのも、この所以でしょう。
また、SNS施策におけるKPIの考え方も現在のところ、「投稿者のフォロアーの数による合計リーチ数」を情報到達の指標としているブランドや、「拡散からの購入導線数」までをも視野に入れるブランドもあると思います。
数値など定量的なゴール・目標を明確にすることは大前提の上で、数値には表れない消費者の「参加や来店・購入の動機」などの定性的な要素の把握も重要です。
この把握を何でもって測定するかはブランドの手腕に関わってきますが、例えば、「投稿の特典として、参加者・来店者すべてに安易に現品やサンプルを渡さない」「若干手間のかかる企画ステップを踏んだ人にベネフィットを提供し、顧客予備軍を見極める」といった施策など、色々と工夫をしなければなりません。
情報到達数、来店者数などの数値を押さえつつも、質を高める視点も求められると同時に、接点を持ちたいターゲット層を明確にしていくことが必要になってきます。
デジタルPRを活用している多くのブランドがこの点を実践できていると思いますが、一部では、このゴールイメージを持たぬまま、「デジタルPRの時代だから」と計画性なくフェイスブックに広告を出したり、漫然とSNS施策を行っているところも少なからず存在し、予算が勿体ないなと感じることもあります。
したがって、一般消費者にSNSで参加してもらうPR販促施策では、「本当の関心層・顧客予備軍を獲得するための施策」なのか、「自社ブランド情報を広く拡散するための施策」なのか、ゴールと目的を明確にし、必要に応じて異なる視点を計画に盛り込むことが必要になってくるのではないでしょうか。