第14回 新型コロナウイルスが中国に残したものとは?

【週刊粧業2020年3月23日6面にて掲載】

 日本で危機感が高まっている新型コロナウイルスだが、逆に中国ではすでに気分は終息ムードとなっている。その反動が現れはじめている最新の商戦から、中国消費者の現状を追いかけてみよう。

 まず、中国で最も厳しい外出規制が行われていた時期、中国の消費者たちは何を求めていたのか。

 トレンドExpressでは1月20日~2月9日、中国の複数のSNSでクチコミ調査を実施した。その結果を見ると、この期間「家の中でしていること」では、当然のことながら「SNS」「動画」「ショッピング」といった携帯端末を使った娯楽が上位を占めた。

 一方でランキング下位をみると「おしゃれ」「ヨガ」「ダイエット」といった自分磨きに時間を使うといった回答が見られ、その中で「化粧の練習」という項目も上がっている。



 また「欲しいもの」では、「マスク」や「消毒薬」など衛生商品に交じり、「抗菌できる化粧品」という健康と美を両立させた製品ニーズが確認できるなど相変わらずコスメニーズは高い。(グラフ参照)

 むしろ、外出規制により抑制されていた消費欲が、状況の好転とともに顕在化しているようだ。一つがJD.comが2月28日に行ったコスメ・スーパーセールである。このキャンペーンにおける売上高は「昨年比1.5倍」と報じられた。

 特にアイメーク関連が伸び、アイシャドウの2月平均売上は前月比44%増、アイブロウは124%増、アイクリームは148%増、目元用マスクは昨年比77%増となっている。

 中国の消費者は現在、外出できたとしてもマスク着用が必須だ。外に見える部分は目元しかないことが、需要を喚起したといえる。

 また2月25日から3月8日まで行われた天猫の「国際婦人デー」イベント「女王節」も全体の売上は19年を超えたという。

 コスメ関連で話題となったのは、近年急成長を見せている中国のローカルブランド「完美日記(Perfect Diary)」だ。

 同ブランドは19年から「アニマルアイシャドウ」というシリーズ商品を展開している。トラやパンダなど動物をイメージした色合いのアイシャドウで、パッケージにもその動物写真が使われている。

 もともとミニプログラム(WeChat上で提供される小規模アプリ)やライブ配信といった多角的プロモーションを得意としていた同ブランドだが、今回の「女王節」では1日でアニマルアイシャドウ40万個を販売するなど大きな成果を上げた。

 こうした状況を見ていると、中国は徐々に新型ウイルスの悪夢から回復を果たし、消費者も「ショッピング」という手法でその間のストレスを発散させていることが伺える。

 上海出身者で配偶者の春節里帰りに連れ添って湖北省を訪れ、そのまま帰郷できなくなっている30代女性は、この「女王節」で「タオバオで食べるもの、着るもの、使うものを山ほど買った」と反動的消費を見せている。

 彼女は「以前は財布の状況を考えて買っていたが、今はもうそれもいいかな。健康でいて、そして欲しいものは買う。後悔しない人生じゃないと」と語っている。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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