【週刊粧業2016年10月3日号4面にて掲載】
今回は化粧品日用品卸企業のアジア戦略(インバウンド/アウトバウンド)をご紹介したいと思います。
■あらた
同社の海外事業は、日本国内で培ってきた卸売り事業のノウハウを広域化するアジア市場へ展開することを目指し、中国、タイにおいて積極的な営業活動を推進しています。
2015年3月にはタイの大手企業であるサハグループとタイ国内にて消費財の卸売りを行う合弁会社「SIAM ARATA CO.,LTD」を設立し、化粧品の卸売りを展開しており、引き続きASEAN市場における卸売り事業の基盤を構築していくとしています。
また、取引先から越境ECの相談を受ける機会が非常に増えており、同社でも実験的に越境ECにも取り組んでいます。
インバウンド対策については、訪日ニーズを読み取り、得意先に卸流通ならではの『出荷データから読み取れるトレンド』などを継続的に提供しており、今後は越境EC提携の橋渡しも重要な役割になっていくと考えています。
■大木
同社では、2011年に設立した上海大木美健貿易有限公司をベースに中国を含めた海外への事業進出を加速していく方針を打ち出しており、2014年1月には「国際事業部」を発足、ベトナム、台湾、タイへのウコン等の食品や雑貨の直輸出をスタートしたほか、ジャカルタ、ドバイに出店しているセブンイレブンへの取扱商品の卸売業を展開しています。
インバウンド対策については、№1商品の調達を最優先とし、№1商品が取り扱えない際は、成分訴求の商品の品揃えを増やすことに加え、№1商品に代わる商品を調達して提案しています。
■中央物産
同社は、中国の越境ECへの期待が非常に高いと考えていますが、小売店との兼ね合いもあるため、積極的に取り組んでおりません。
現状は越境ECに対して、市場やニーズ、法体制等を含めて過渡期と判断しており、将来的な需要に備え、海外流通のパイプ増強を中心とした基盤固めを進めている段階です。
インバウンド対策については、訪日外国人需要への対応として、免税店や訪日客が宿泊するホテルへの販売提案などを行っています。
■PALTAC
同社では、インバウンド需要が拡大している状況を鑑み、信頼性や安全性・品質の高い日本製化粧品を中国現地消費者向け販売としてECビジネスに参画する計画です。
中国政府系の医薬品卸売り最大手である国薬HDが運営するECサイト「国薬直販」は、「天猫国際(ECモール)」内に設置されており、同社は化粧品に限らず、日用品や健康食品もあわせて取扱う予定です。
インバウンド対策については、「PALTACストアソリューションフェア」で「インバウンド需要を取り込もう」と題したコーナーを設置し、訪日外国人観光客の買い物ニーズを解説することで売り場構築のヒントを発信している他、POPなどの販促物や訪日外国人観光客から注目を集めている商品を紹介するなどの対応を行っています。
■おわりに
2014年10月の免税制度改正以降、「日本製₌メイドインジャパン」の消費財の品質の高さ・安全性や使い勝手の良さから、中国や東南アジアからの訪日観光客による『爆買い』と称される大量消費が国内化粧品市場にも恩恵をもたらしています。
この様な状況の中、卸各社では、アジア市場で自社製品を販売したいという化粧品メーカーや小売企業のニーズ拡大に対応すべく、卸業として日本製化粧品を海外へ供給するためのサポート事業を強化しています。
今後、インバウンドをアウトバウンドにつなげていくには、メーカー・卸・小売が一体となったビジネスモデルの構築が必要になるものと思われます。