第30回 トイレタリー用品のアジア市場動向

【週刊粧業2016年11月7日号4面にて掲載】

 今回はトイレタリー今回はトイレタリ今回はトイレタリ用品のアジア市場動向についてご紹介したいと思います。

 市場が伸びている国は、東アジアでは中国です。ここ5〜10年はGDP成長率±0.5〜1%ほどで成長しています。東南アジアではタイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンです。

 インドについては人口は多いですが、まだこれからだと思います。市場は加工食品と同様に1人当たりGDPで1000ドルを超えると手洗い石けん、洗剤、生理用品といった基本的な商品が普及し、3000ドルを超えると高付加価値品も売れてくるといった状況です。

 市場で有望なのはサニタリー関連です。20〜30代が消費の中心で、育児世帯が多いのでベビー用紙おむつの需要があります。同様に衣料用の洗剤も有望とみられます。売れ筋は、例えば喫煙率が高い中国ではタバコのヤニ用の歯磨き粉、虫の多い東南アジアでは強力な殺虫剤などが需要が高いです。

 消費者の主要な情報チャネルとして、中国、タイ、マレーシア、シンガポールなど進んだ国では口コミの影響力が強いです。若い人が多いのでSNSやスマートフォン向けの動画サイト、インターネット広告が有望視されています。他方、フィリピン、ベトナム、インドネシア、インドなど個人所得が低い国ではTVCMの力が強くなっています。

 市場をリードするのは、P&G、ユニリーバ、歯磨き類でコルゲート、台所洗剤などでSCジョンソンなどの欧米系の企業で、特にASEAN、インドでは欧米系が席巻しており、この分野では地場のローカルメーカーは弱いです。原因は商品開発力の差で、商品力、品質、マーケティング力が明らかに違います。

 日系企業で存在感があるのは、紙おむつのユニ・チャームです。現地に工場を設立して中間層向け製品を生産・販売し、アジアのどこの国でも強いです。サニタリー系ではP&Gとユニ・チャームの一騎打ちの状況となっています。

 次いで花王とライオンが機能やボリュームを絞り、価格を下げて中間層向けに展開している他、フマキラーが製品のローカライズ化や小分け販売で売上げを伸ばしています。

 日本と異なるのは流通構造です。アジアでは個人商店、露天商、公設市場のような伝統的小売業態が多く、日系企業が開拓に悩むケースがよくみられます。

 今後、基本的な方向性として経済成長とともに日本や欧米のような意識・習慣になっていくと思われます。東アジアは成熟してきており、当面はASEAN主要5カ国が焦点になると思います。日用品は革新的なイノベーションが起こりづらいカテゴリーで、ちょっとしたニーズを把握して改善することの積み重ねです。

 先行者が強く、後発はニッチを攻めるなどの工夫が必要と見られます。日系企業としては、現地富裕層にはそのまま輸入品を持って行く、中間層には専用商品を現地生産する、貧困層にはそれをさらに小分けにという対応を基本に、日本と異なり貧困層も経済成長しているため、未来の中間層である彼らへのアプローチも欠かせないと思います。
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浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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