連載コラム

矢野経済研究所 アジア美容マーケットニュース

2020.06.18

第32回 アジアのボリュームゾーン市場の可能性:フマキラーの事例考察

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

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【週刊粧業2017年1月16日号15面にて掲載】

 今回は、アジアのボリュームゾーン向けの事業を展開して成功していると言われているフマキラーの事例を紹介したいと思います。

【フマキラーの事業概要】

 日本の殺虫剤市場大手である同社の2016年度の総売上高は36288百万円です。その内、東南アジアで16178百万円の売上高を上げており、その大部分がインドネシアでの売上高です。

 インドネシアには、1990年に進出しており、現在では、グローバルレベルの大手企業がひしめくインドネシア殺虫剤市場で20%超のシェアを確保しています。

 フマキラーのマーケティング戦略のポイントとして、以下の4つがあげられると思います。

①サイズバリエーション(小分け販売)

 インドネシアの殺虫剤市場では圧倒的に線香の市場が大きく、線香は1箱にダブルコイル(2巻ワンセット)が5つ入っていますが、ばら売りも可能であり、売れ筋はワンダブルコイルです。

 背景には可処分所得の低さや、ワルンを倉庫代わりにしているという生活習慣があります。

 同社はこのニーズに対応、ワンダブルコイルをはじめとした小分け販売を行うことでシェアを拡大させています。低価格でも利益を上げるためには、生産コストを劇的に引き下げなくてはならないため、同社では、原材料はほぼ現地で調達している他、工場全体で生産性向上のための改善運動を進めています。

②製品にローカライズ化(インドネシア研究所の設立)

 インドネシアで販売している製品で、日本と同じ処方のものは1つもありません。

 同社は2004年に、現地でR&Dセンターを開設、国中の蚊を集めて飼育し、生態観察から薬効テストまで行った結果、インドネシアの蚊は薬剤に対する抵抗力が、日本の蚊の5倍も強いということがわかりました。

 そこで同国に適した薬効の高い製品の開発を開始、従来は薬剤を0.3%入れていましたが、これを倍の0.6%にして2005年に発売しました。こういった製品のローカライズ化を行うことで、フマキラーはシェアを拡大させています。

③競争環境の激しくない地域の開拓(地方から都市を攻める)

 インドネシアは1万4000もの島々からなる島国です。なかでもジャワ、スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、イリアンが五大島と言われています。

 首都ジャカルタがあり最大の人口規模を誇るジャワ島は、すでにグローバルメーカーとローカルメーカーがひしめく激戦区だったため、最後発に属する同社は、競争が比較的緩やかなジャワ島以外から市場の開拓を始めるという決断を下し、売上を大きく拡大させることに成功しています。

④キャンバスバンセール活動(試供品配布)

 インドネシアでは地元のディストリビューターの下に「グロシール」と呼ばれる中間の卸業者が入り、いわゆる町や村の雑貨屋さん「ワルン」に商品が流れます。地元のディストリビューターは華僑が中心であり、ワルンの店主は、グロシールに仕入に来てくれるため、ワルンをいかに攻略するかが流通網確保のカギとなります。

 同社は、ワルン開拓のため、「キャンバスバンセール」と名付けたマーケティング活動を展開しています。

 同社の営業マン1人とMDと呼ぶ女性2人の3人がチームとなって、日本で言えば郡に当たるクチャマタンを担当します。42台あるキャンバスバンに分乗したキャンバス隊が、郡のすべての集落を訪問します。

 営業マンはワルンを一軒一軒訪れて商品を説明して商品を置いてもらうように交渉し、MDは周辺の家庭を訪問して、試供品を配布するという活動です。

 消費者が試供品を気に入ってくれればワルンに買いに来る、そしてワルンでの販売が増えればワルンの店主がグロシールに仕入に来るという戦略です。

 同社では、こういった地道な活動を継続的に行うことで流通網確保に成功しています。

 【終わりに】

 次回は、中低所得者ボリュームゾーン市場のビジネスの可能性と同市場アプローチのポイントを考察したいと思います。

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プロフィール

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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