連載コラム

矢野経済研究所 アジア美容マーケットニュース

2020.06.18

第33回 アジアのボリュームゾーン市場の可能性:ボリュームゾーン市場開拓へ向けたポイント

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

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【週刊粧業2017年2月6日号4面にて掲載】

 これから経済が発展していくアジア新興国の多くはボリュームゾーンと呼ばれる中間所得者層、もしくは次の中間所得者層となりうる低所得者層ですが、多くの日系企業は富裕層しか攻め切れていないのが現状です。

 これらの状況を打破し、日系企業にとってこれからの市場拡大が見込め、より多くの人々の生活向上につながるボリュームゾーン向けの事業を展開していくには、都市部の富裕層向け事業とは異なるノウハウが必要となると思います。

ボリュームゾーン市場開拓へ向けたポイント

1.流通パートナーの活用

 アジア新興国は地域や国によってビジネス習慣、消費嗜好、流通構造も全く異なります。また、近代小売業が少なく、流通網が日本と違うケースも多いです。

 自らの経営資源で現地市場を攻略する手法もありますが、時間的・資金的に投入できる資源が限られている場合に頼りになるのが現地の流通パートナーです。彼らは現地のビジネス習慣に精通し、人脈も持つ現地の名士的存在であり、地方で販売したい場合は、流通パートナー経由で販売する方法が最も早く効率的です。

2.所得層別にあわせた商品戦略

 アジア新興国市場を開拓するにあたって問題となるのが価格面です。日系企業の商品の優秀さを疑う消費者は居ません。しかしながら、その商品は富裕層にとっては魅力的であっても、中間所得者層や低所得者層に対しては通用しない可能性が高いです。

 日本と生活習慣が違い、収入も低く、製品経験も少ない中間所得者層・低所得者層の消費者にとっては、基本的性能だけで満足する場合も多く、求めているものが違う場合が多いです。日系企業としては、市場ニーズにあった価格帯の商品を開発していくことが求められており、所得層別の商品展開を行うことが必要です。具体的には、以下の施策が考えられると思います。

〈所得層別にあわせた商品戦略のポイント〉

①富裕層(世帯可処分所得3万5000ドル超)

 ・日本で販売する中価格帯・高価格帯商品の横展開 

②中間所得者層(世帯可処分所得5000ドル~3万5000ドル未満)

 ・日本で販売する低価格帯商品の横展開

 ・アジア戦略製品の開発

③低所得者層(世帯可処分所得5000ドル未満)

 ・サイズバリエーションによる対応

3.BOP層へのアプローチ

 BOPは「Bottom of the Pyramid」もしくは「BaseofthePyramid」の略で、低所得層の中でも、経済ピラミッドの底辺にいる年間所得3000ドル未満で生活している40億人を顧客として捉えた概念です。

 BOP層の40億人の総収入は5兆ドルになり、これは日本の実質国内総生産に匹敵するという巨大なマーケットとなっています。

 また、経済成長を続けるアジアのBOP層は中間層予備軍、つまり中間所得者層をターゲットにしたボリュームゾーン市場の前哨戦であることから、BOP層へのアプローチを強化する必要があります。BOPビジネスのポイントとしては、以下の3つがあげられます。

〈BOPビジネスのポイント〉

①CSRとマーケティングの融合

②安価な小分け商品のラインアップ

③BOP層へアプローチ可能な販売体制の構築

おわりに

 アジア新興国における日系企業は、『意思決定の遅さ』『ブランディング力』といった点に弱みがあるものの、『粘り強さ』『現地市場への貢献性』『継続性』『製品安全性・機能性』などの強みも多く、アジア新興国市場におけるポテンシャルは高いと思います。

 今後の日系企業は、アジア新興国市場においてボリュームゾーンである中間所得者層、もしくは次の中間所得者層となりうる低所得者層に向けた事業展開を行うことによってアジア新興国のボリュームゾーン需要の取り込みを図り、更なる成長を求めていくべきではないでしょうか。

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プロフィール

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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