第37回 「経営基盤強化を総仕上げ」(あらた 畑中伸介会長)

【週刊粧業2020年11月9日号4面にて掲載】

 「あらた」は2002年4月、「ダイカ」「伊藤伊」「サンビック」の3社が経営統合して、株式移転方式による共同持株会社として設立された。

 設立から2017年3月期までの15年間は、「あらたファーストステージ」として、企業体質の整備を柱とした経営基盤の強化に取り組んできた。

 その最後の10年間社長として基盤強化の総仕上げを行ったのが畑中伸介(はたなか のぶゆき)現会長である。なお2018年3月期からは「あらたセカンドステージ」として、須崎裕明社長が2020年3月期を最終年度とする新中期計画に取り組んできた。

 畑中会長は、トーメンを経て、秀光舎、伊藤安、シスコの社長などを歴任し、2007年4月、あらたの社長執行役員に就任した。そして2017年4月に代表取締役会長 最高経営責任者、2019年6月に取締役会長に就任して現在に至っている。

 社長としての最終年となった2017年の本紙新年号インタビューで畑中社長(当時)は私に次のように語っている。

 「当社は合併を繰り返して成長してきたこともあり、通常の会社に比べて、内部体制の整備に経営のスタミナを費やしてきました。これからの10年を考えると、社会の変化、環境の変化に対応して、中間流通業としての卸の立ち位置も変化していきます。私が社長に就任して今期で10年目となりますが、次の10年先を考えたとき、もう少し外向き思考で新たな中期計画を策定したいと思います。その理由は、これまでの10年間で、内部体制の整備が一応、レールに乗ったからです」 

 経営基盤強化の総仕上げにある程度手応えを感じた発言と言える。

 畑中氏は社長在任中、さまざまな課題に取り組み成果を上げてきた。その第1が物流ネットワークの整備による生産性の向上である。

 「卸売業にとってオーソドックスな利益の出し方は、売上高を上げ、荒利益率を維持しながら、経費率を引き下げていくことです」。事実、同社の経費率は毎年のように下がっており、収益性の向上に貢献している。

 第2は、サプライチェーン全体の効率化である。同社では、ウォルマートとP&Gの取り組みをモデルとした「ジョイント ビジネス プラン」(JBP)活動に力を入れている。

 製配販ともに情報を共有化して、全体最適をめざす取り組みである。そのためには、データをベースとした提案型営業活動の強化が重要になる。「取り引き」から「取り組み」への転換である。

 第3は、人材教育の強化である。「当社は創業以来、人材教育に時間を掛け続けてきました。合併を繰り返して成長してきただけに、企業倫理も含め、社内で考え方を統一し共有することは極めて大切です」

 こうした成果をベースとして須崎社長は「業務改革本部」を立ち上げ、間接業務の集約やAIの活用などによる業務改革に取り組み、さらなる生産性の向上により新たな成長をめざしている。

(次回は、ちょっと一休み。エピソードなど)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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