【週刊粧業2020年11月30日号4面にて掲載】
2020年はwithコロナによる激変の1年でしたが、SDGs意識が急激に高まった年でもありました。
これまで、SDGsはオシャレなモードメディアにおける局地的な潮流でしたが、今年後半からは一般的なメディアでも加速度的に登場頻度が増加しています。
『STORY』の「SDGs時代の、長く愛せるブランド名品」のほか、男性誌『Hot₋Dog PRESS』では「モテるSDGs」 という軽いノリの見出しも見かけましたが、ここに少し違和感があります。
STORYもHot₋Dog PRESSも40代をターゲットとしているため、Z世代とは違う感覚を覚えました。
たとえば、『CanCam』のSDGs連載である、トラウデン直美の私物のサステナブルグッズ企画には、「環境省プラごみゼロアンバサダーであり、高校2年生の秋から1年間、校内フードバンクを行うなど、SDGsにかかわる活動も積極的に行っている」とあります。流行語的にSDGsを捉えている40代に対し、Z世代は行動とリンクしている印象です。
こうしたギャップは、化粧品企画の現場でも起きています。
新ブランドの企画会議で、若い世代がSDGsコンセプトを提案することが増えていますが、管理職側がZ世代の担当者の意図をくみ取ることができず、「それって儲かるの?」で議論終了となったという報告を数件聞きました。
「頭の固い大人が若者のアイデアを潰した」というよくある構図にも見えますが、そうとも言い切れない部分があります。
消費者ニーズについて、マッキンゼーが実施した調査によると、東アジアのZ世代は欧米と比べて「環境保護の意識は高いが、余分にお金を払おうとは思わない」という傾向があるそうです。
わざわざ新しいものを買うのではなく、今まで買っている物にSDGsが反映されている、というのが求められるのかもしれません。
1月に米資産運用の最大手ブラックロックが、ESG(環境・社会・統治)を軸にした運用を強化すると表明しました。
企業活動においてサステナビリティが「当たり前」になる中、SDGs自体をコンセプトのメインに据えるというのは不自然になりつつあります。
「SDGs実現は当たり前。企業として常に進化していかなければなりません。成分や社会的意義を追求した結果、かつて経験したことのない製造の制約や商品化までの困難も出てくるでしょう。その上で商品自体が消費者にとって魅力的である」ことこそが、最も重要なのです。