【週刊粧業2021年2月8日号5面にて掲載】
EC・通販業界のみならずどの業界も、人口減、高齢化の波もあり、新規客を獲得することが難しくなっており、ますます既存客の重要性に意識が行くようになっています。
化粧品、健康食品のような単品リピート通販業界では、定期という仕組みによって既存客の定着化に成功してきた業界といえるでしょう。
しかし、最近では、どこも定期コースを導入していることもあり、定期という仕組みだけでお客様を繋ぎ止めることが難しくなってきました。そこで仕組みを超えた形でお客様と絆をつくり、ファンになってもらい、支持される、愛される企業へと成長させていくことが必要となっています。
自社を積極的に支持するファンをつくるには、施策の実行の前に、自社が提供する商品、サービスを通して、どうお客様に感じてもらいたいかという理念づくりが大切です。
室町時代に創業し500年の歴史を誇る、和菓子屋の虎屋は、『おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く』という理念を掲げています。
和菓子をおいしく召し上がって頂くために、『喜んで』という言葉を加えることで、その影響力は職人のみならず、店員の振る舞いにも及んでいきます。
どんなに職人が丹精込めて、おいしいお菓子をつくっても商品をお客様に手渡しする時に、店員の対応が悪ければ、喜んで召し上がっていただくことにはなりません。
店員がお客様に真摯に向き合い、どうすれば喜んで頂けるのかを常に考えるという姿勢づくりにもつながっていきます。
想いがあるからこそ、行動を通じてお客様に想いが伝わっていきます。ファンをつくるために、手書きの手紙を書く、お誕生日にプレゼントを贈るという施策の話しだけでは、お客様に想いは伝わらないのです。
化粧品通販会社A社は、『お客様が主語』、販売形態は通販でも、『顔の見える個人商店のような心通うものでありたい』という理念をもっています。そのため、取り組みを考えるときは、自社が儲かるか? ではなく、それはお客様が喜ぶのか? という視点で考えます。
昨年のコロナ禍では、外出自粛などにより世の中がストレスを抱えた状態の中、お客様を思いやるお手紙や話がしたくなったらいつでもお電話くださいというメッセージをどこよりも早く発信していました。
よく企業規模が大きくなると、なかなかすぐに行動に移すことができないという声を聞きます。しかし、A社は、常に理念に立ち返り、今、何を優先させるべきかが明確だったのでこのような素早い対応ができたのだと考えます。
健康食品通販会社B社は、『食改善で真の健康をお届けする』という理念を掲げています。商品を売るという考えよりも、健康セミナーや料理教室の開催さらに、小冊子などを通して、食事のあり方という考え方を伝えることを重視しています。
また、創業以来、1人ひとりのお客様を大切にするという考えが社員に浸透しており、お電話、お手紙を通じてお客様との強い関係を構築しています。
理念を明確にすることで、自社の取り組みが理念に基づいているかについて、社員皆が、常に立ち返ることができます。
逆に、売上を上げることばかりを考えていると視野が狭くなり、お客様不在の取り組みになりがちです。
ファンをつくるためには、少し遠回りに見えても、まずは理念を明確にし、それを共有し徹底した行動を心がけていくことが大切です。
自社の理念は何だろうか? 皆で共有できているかを、ぜひ振りかえってみてはいかがでしょうか?