【週刊粧業2021年8月30日14面にて掲載】
2020年はトラベルリテール業界に非常に大きな『事件』が2つあった。1つは新型コロナウイルスの発生・流行であるが、もう1つは「離島免税制度」の拡大だ。中国海南島におけるトラベルリテールを大いに盛り上げた。今回はその中国海南島離島免税消費の状況を最新レポートから見ていこう。
知っての通り、中国政府は20年7月から、海南島(海南省)の離島免税政策を大きく緩和した。そのことによって中国では空前の海南島免税ショッピングブームが到来している。
トレンドExpressでは、オープンデータおよび自社のクチコミデータ分析から制作したレポート『魅惑の海南島白書』を刊行、その実態を紹介している。
中国の消費者は海南島でどのような消費を行っているのだろうか? 『魅惑の海南島白書』では、「海南島」に関するクチコミから投稿数の多い商品群を整理した。
クチコミで1位となっているのが携帯電話、スマホである。
20年の離島免税拡大でスマホを含む電子機器も免税対象に含まれた。そのため、特にiPhoneへの注目が高まり、海南島での観光時にiPhoneを購入するという消費者が増加したのである。それ以降は「美食」や「海鮮」、さらには現地特産品であるフルーツ類、「不動産」が並ぶが、注目すべきはやはり「化粧品」が挙がっているという点だろう。
「海南×免税」というキーワードで見てみると、海南島免税における化粧品消費の実態をより克明に確認することができる。
商品セグメント別で1位から5位までを「美容液」「香水」「スキンケア品」「アイクリーム」「口紅」とすべて化粧品の商品類が占めていることがわかり、上位10品目のうち実に7品目が化粧品となっている。
また、「海南×免税」のキーワードとともに投稿されているブランド名は、1位が「エスティーローダー」、2位が「カルティエ」、3位が「アルマーニ」と高級ブランドが並ぶ。その中で、トップ10のうち6つを純化粧品ブランドが占めていることは注目に値するだろう。(ラグジュアリーブランドは化粧品とファッション両方のクチコミを含んでいる)
一方で、「離島免税制度」には課題も出てきている。免税制度を利用して化粧品を大量に購入し、内地に戻ってからTaobaoなどで売りさばく悪質な「転売ヤー」の存在である。
21年7月にはこうした「転売ヤー」への対応に新たな施策が打ち出された。
同年8月1日から、化粧品や高級酒などの離島免税商品に対して、専用のQRコードが貼付されるようになり、購入場所・購入時刻・購入者などの情報が登録されることになった。
この取り組みを通じて、商品と購入者を一元管理できるようにすることを目指しているが、ここに海南島を「健全な観光消費の場にしたい」という中国政府の狙いが見える。
今後も海南島は、政府のテコ入れやさまざまな形で世界の企業からの投資を受けながら、引き続き中国消費者の免税ショッピング、特に化粧品免税購入の聖地としての立場が続いていくと予想される。