第93回 お客様視点で考えていますか?

【週刊粧業2021年10月25日号4面にて掲載】

 多くのEC/通販事業会社を見ていると、成功している企業と苦戦している企業にはそれぞれ特徴があることに気づかされます。

 成功している企業は、基本に忠実であり、スピードを持って取り組みを行うことはもちろんのこと、必ずお客様視点を持った考えをします。

 コンサルティングの現場で打ち合わせをしていても、お客様はどのような点に満足をし、逆に不満をもっているだろうか? どのような気持ちから、商品を使い続けているのか? 止めてしまうのだろうかといった課題に、多くの仮説が挙がり具体的な自社のお客様像を持ち合わせています。

 一方、苦戦している企業は、自社のお客様について具体的なイメージを持ち合わせていない傾向にあります。お客様視点をもたずにあれこれ手を出しては最後までやりきらず、他社の成功事例や新しいシステムばかりを追いかけています。

 そのため、自社の商品やサービスにお客様がどのような点に満足しているのか? 不満をもっていそうか? 仮説が挙がらず、他社よりも価格が高い、定期の回数お約束がないから継続しないといった、表面的な事象ばかりが課題として挙がります。

 通販会社A社は、敏感肌向けの化粧品を販売しています。肌悩みが強いお客様が多く、本商品購入前に商品の選び方、使い方についてのご相談がよく入ります。

 ご相談時には、今のお肌の状態や今までのお手入れ方法について丁寧に聞き取りをしながら、今のお客様の肌の状態に合わせた商品提案や使い方についてお伝えします。とても丁寧な聞き取りと説明のため、時には30分や1時間にも及びます。

 買うか買わないかはっきりとしないお客様1人にこのような時間をかけていては、非効率と捉える企業の方が多いでしょう。

 しかし、A社の経営者は、肌悩みが強ければ強いお客様ほど、失敗したくないと気持ちが強く働き、あれこれ沢山質問をしてくる。その気持ちに気づいてあげて、真摯に応えれば納得して買い、その後は長く買い続けてくれる傾向にある。決して、面倒だと思い、適当に応えたり、価格を安くするといった特典に逃げてはいけないと言います。

 実際、A社のお客様のLTVはとても高く、納得したお客様ほど購入点数も多い傾向あることがわかります。これは、多くのお客様との会話を通し、お客様視点で聞き取りをした成果なのでしょう。

 B社は、お客様視点を持てるように、社員は、自社商品の定期に入り、どのように商品が届くかチェックを行います。商品が届いた際に箱がつぶれていないか? 同梱物は、乱雑な入れ方ではないかを顧客視点で感じることを心がけます。

 また、月に1回全社員で、朝の1時間半を使ってお客様から寄せられた喜びのお手紙やクレームを読む時間に充てています。もちろん、ただ、読むのではなく、何故、嬉しかったかのか? 何故、悪い印象を持たれたのか? 考えや意見を出し合います。こうすることでお客様視点を養うことにつなげています。

 お客様視点を持たずに、定期継続率をアップのためにという課題を議論をしていると、独りよがりな施策となり、結果、色々なことをしているのだけど、継続率がアップしない、LTVが上がらないことにつながります。

 お客様視点を持つことは、1日で出来ることではありません。日々の仕事の中で、お手紙や質問、クレームから、何故「お客様は、このように感じたのだろうか?」と自問自答を繰り返す習慣をつけることが大切です。
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船生千紗子

(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント

通販に特化した広告代理店を経て、株式会社通販総研に入社。現在、化粧品通販新規参入支援、化粧品通販企業向けに新規顧客獲得、リピート顧客育成による売上アップ支援を行っています。クライアントの強みを伸ばし、着実な成長を促すことをモットーにしています。

https://www.tsuhan-soken.com/

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