連載コラム

激変するコスメマーケット

2022.10.07

第74回 シニア層に化粧品を売る前に

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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【週刊粧業2022年05月16日号4面にて掲載】

 近い将来、日本人は3人に1人が65歳以上になるようだ。そのためシニア層に化粧品を売ることは、とても重要なビジネスになる。先輩シニアがたくさんいるので、65歳以上になってもなかなか老け込むことができない。いつまでも若々しく見せないといけなくなってくるからだ。

 実際、通販化粧品のビジネスに関わっていると本当にシニアマーケットが活況を呈していることがよくわかる。新聞広告やテレビのインフォマーシャルで化粧品を購入してくれるお客様は、ほとんどが70歳代。60歳代はまだ「若い方だ」と思えるくらいだ。

 そしてシニア向け化粧品をよく見てみると、「えっ!」と思うようなことも多い。一番驚くのは、凝ったネーミングのアイテム。「若い頃はそんなアイテムはなかったけどなあ~」と、思ってしまう。シニア層にそうした違和感を抱かせない工夫は必要だと思う。

 私は常々、シニア層に化粧を売る時は、まずシニア層が自ら商品開発や販売促進に参加することが大切だと思っているが、各社とも今の組織体制ではなかなかそうはいかない。若い世代が企画しても、的外れな結果にならないために、まずは現在のシニア層のニーズをきちんと理解する必要がある。

 その1つ目のポイントは、シニア層の“いま”を知ることだ。シニア層の肌悩みといえば、シワやたるみ、老け顔。このシニア特有の肌悩みから脱し、若々しくありたいと願う人がとても多い。こうしたニーズの背景には「いつまでも元気な姿で社会に参加したい」という願望があることを知って欲しい。

 2つ目のポイントは、「若々しくしていたいが、そのためのお手入れの方法を知らない」ということだ。若い頃に習ったスキンケアやメーキャップの方法を長年続け、今の年齢に合ったお手入れや化粧方法があることすら知らない。つまりシニア層は若い頃に学んだ美容情報が更新されていないのだ。

 そのためシニア層の“いま”を知るだけでは、本当に理解しているとは言えない。彼女たちの美容習慣を知るためにも、シニア層の“昔”の美容経験を知ること、美容体験の歴史を同じ目線でたどることも大切だ。

 例えば、現在では当然のUV対策も、彼女たちの若いころは肌を焼くことが流行した世代。「日やけ」はオシャレの一環として推奨されていたのだ。化粧用具も今ほど発達していないのはもちろん、メークアイテムももっと少なかった時代である。

 現在の美容情報を取り入れていないシニア層が多い中で、「何を知っていて、何を知らないのか」を把握するためにも、こうした美容経験を若い社員が把握しておくことも大切だ。

 そんな肌悩みが多いシニア層でも、アンケートでは「お手入れは簡単な方が良い」と答える。「難しいのは面倒くさい」「若い人のようにたくさん手間ひまを掛けたメークはできない」という返事が返ってくる。

 シニア層も元気で忙しいために「簡単」「スピーディー」に仕上がるものが好まれるようだ。そのためメーカーが推奨する使用量、使用手順を無視して慣れた自己流お手入れをしてしまう人も多い。

 化粧品は正しく使ってもらって初めて効果や価値を発揮する。「正しい使い方」をお客様にしっかりと伝えることも大切なことだ。

 また情報伝達は、店舗とイベントの対面の場合、テレビや紙媒体など情報の場合と、それぞれのコツを押さえながら組み合わせることも必要だ。そのうえで、シニア層に寄り添い、悩みに「共感」を示せば、それはやがて「ファン化」へとつながっていく。

 大切なのは、「正しい方法を続ければ必ず結果が出せる」ことを伝えること。美容インストラクターとして、それぞれの個性に合わせて、励まし、あきらめずに伴走していく姿勢が理想的だと思う。

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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