【週刊粧業2022年3月28日5面にて掲載】
中国コスメ市場で韓国ブランドが光を失いつつある。少なくとも、一部のブランドは規模を縮小、もしくは中国市場からの撤退を進めている模様だ。その様子は中国SNS上にどのように現れているか。トレンドExpressのSNSクチコミ簡易分析から見てみた。
中国コスメ市場において韓国コスメは巧みにそのシェアを確保してきた。しかし、その韓国ブランドが中国市場でシェアを徐々に失いつつあるようだ。
最も顕著な例はコスメブランド「Innisfree」。同ブランドは2021年に中国国内200店舗以上を閉店し、その規模を縮小した。
トレンドExpressでは、こうした韓国ブランドのウェイボーにおけるクチコミ簡易分析を実施した。
韓国コスメを意味する「韓粧」というキーワードは、1年前の21年3月時点で3200件程度が確認できたが、同年5月、すなわち618商戦シーズンを境に急激に数を減らしたことが見て取れる。22年2月時点では500件余りと、1年間で1/6程度にまで減少している。
クチコミの減少が特に顕著なのは、やはり明確な縮小路線を歩んでいる「Innisfree」である。
21年3月には5万5000件と一定規模のクチコミ件数が見られたが、7月から一気に減少を始め、今年2月には3155件と、1/10以下にまで減少していた。
アモーレパシフィック系列の高級ブランド「HERA」も、昨年7月には1万件近いクチコミがあったが、現在は1000件余りと振るわず、中国市場からの撤退を発表している。
この状況だけ見れば「中国市場での韓国コスメは終わった」という印象を与えかねないが、「韓国コスメすべてが厳しい状況にある」と断じるにはやや早計である。
アモーレパシフィックのライバル、LG生活健康の「The History of Whoo」は、ウェイボー上で一定レベルのクチコミ件数を保っており、市場での存在感にも大きな変化はない。また同じアモーレパシフィック系列でも「Sulwhasoo」はクチコミに大きな減退感はない。
この状況には各ブランドのマーケティング戦略が影響しているといえそうだ。
「The History of Whoo」は新鋭のマーケティングチャネル開拓を積極的に行っている。
今年3月8日のEC商戦「婦女節(国際婦人デー)」のライブコマースでは、業界トップのタオバオライブに加えて、新興の抖音ライブでも積極的にプロモーションを展開。さらに、同ブランドのターゲット層の利用が多いSNS「小紅書(RED)」においても施策を実施しており、その積極さが余ってステルスマーケティングの嫌疑をかけられ、同アプリ内での検索表示から一時的に除外されてしまっていたほどである。
それに対し、減退している2ブランドは、比較的早く中国市場に進出していたことやブランドイメージへの考慮か、実店舗重視の路線をとっていた。いわばマーケティングのデジタルシフトに二の足を踏んでいた感が大きい。
実店舗の存在価値自体は、中国市場でも依然として有効であるが、デジタルとの掛け合わせが上手くいかなかった、というべきかもしれない。
デジタルマーケティングを得意とする中国ブランドが台頭する中、既存店舗(オフライン)とオンラインの連動や、それぞれの価値を再設計する戦略が重要となっている。