【週刊粧業2025年1月13日号6面にて掲載】
買おうと決めていた物があったのに、お店に買いに行ってみると種類が多すぎて選べず、結局買わないで帰ってきてしまった。こんな経験をしたことはありませんか?
販売する側は、選択肢が多い方がお客様は喜ぶと考えますが、必ずしも選択肢が多いことをお客様は望んでいません。選択肢が多いと何かを選択した後に、もっと良い選択があったのではないかと後悔の念が浮かんでしまう。このような状態のことを「選択のパラドックス」と言います。
「選択のパラドクス」で有名なのは、1995年にコロンビア大学に所属するシーナ・アイエンガー教授により発表された「ジャムの法則」です。
あるスーパーマーケットに買い物に来たお客様にジャムの試食販売を行いました。試食販売コーナーを2グループに分けてお客様の傾向を調査しました。24種類のジャムが置いてあるグループと6種類のジャムが置いてあるグループの2つを用意したところ、6種類のジャムのグループの方が購入率は10倍となりました。
この結果から「人は選択肢が多すぎると一つのものを選ぶのが難しくなり選択すること自体をやめることもある」という心理作用が発見されました。
健康食品通販会社Aが、折込みチラシでの売上アップのために、今まで1品しか載せていなかったのに対し、4品載せるという挑戦をしました。同じだけ反応があれば売上が2~3倍になるのではと考えたのでした。結果は反応自体が4分の1に減ってしまいました。商品の価値を伝える面積も4分の1になってしまい、どの商品も魅力が伝わらないという結果になりました。
化粧品通販会社B社は、お試し品購入者に2回目購入促進のDMを送っています。当初は、お客様は自分の肌に合った商品を自由に選びたいのではと考え、多くの商品を掲載していました。しかし、お客様からすると、どの商品を選べば良いのか判断ができず購入を諦めてしまう人が一定数存在することが伺えました。そこで、「お勧めセット」をメインとしたDMに作り変えたところ2回目購入者のほとんどが「お勧めセット」を購入するようになりました。
また、商品を選ぶという視点から、少し離れるのですが、広告作りにおいても似たような現象が当てはまるのではないかと考えます。
時々、1つの効能効果に絞らずに、あれにもこれにも良いと表現した広告を見かけます。販売する側は、1つの商品で複数の効果を得られる商品なので、お客様メリットが高いと考えてのことでしょう。
また、1つの悩み解決に特化したと表現をするよりも、複数の悩みを解決できる商品であると表現するほうが、ターゲットが広がり、結果、販売数が多くなると考えるのでしょう。
しかし、買う側からすると、あれにもこれにも良いといった表現では結局一体何に良い商品であるのか、自分に適した商品であるのか判断ができません。
また、複数の悩みを解決できることが、必ずしもお客様メリットとは感じられず、自身の悩みに特化した専門性の高い商品を選択したいと考えます。
広告やDMにおいて多くの商品を掲載し、選べないといった状態にしてはいないか? 1つの商品に複数の効能効果を並べ、結局何に良い商品であるか、誰向けの商品であるか迷わせていないか?
このような視点をもって、自社のHP、同梱物、DMなどを、振り返ってみてはいかがでしょうか?
船生千紗子
(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント
通販に特化した広告代理店を経て、株式会社通販総研に入社。現在、化粧品通販新規参入支援、化粧品通販企業向けに新規顧客獲得、リピート顧客育成による売上アップ支援を行っています。クライアントの強みを伸ばし、着実な成長を促すことをモットーにしています。
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