【週刊粧業2025年1月20日号6面にて掲載】
グリーンサプライチェーンにおける「輸送」では、基本的なところでは、「製造」にも関わるが、原料や製品の国内外輸送にクリーンエネルギーを採用することが求められる。エネルギー利用により、CO2だけでなく、空気中の汚染に対しても取り組まなければならない。
製造における空気中汚染では、化学物質や農薬・化学肥料による汚染があるが、輸送においても同様に化学物質などがある。また、生物多様性の観点では、他国から海運および空運輸送により、荷物やコンテナなどについてしまう侵略的外来種の侵入についても留意しなければならない。
通常の輸入工程の中で、それは可能な限り排除されるものだが、このような点で国産原料・製品がグローバルでは求められている。調達の部分にも関わるが、絶滅危惧種に指定されている野生生物の原料を採用していないか、検疫などで確認が必要だ。これも通常の輸入工程に含まれているが、特に(1)で記述したアロエフェロクスは、製品として輸入してはじめて検疫でいまだに摘発されている。
「廃棄」では、まず容器などのプラスチック製品が海洋流出しないように、正しい廃棄が求められる。分別など正しい廃棄方法や回収など企業が消費者に指南することも大事だ。ここでも国連の「Beat Plastic Pollution」にもつながるうえ、さらに廃棄を減らしていくという取り組み「Beat Waste Pollution」にもつながる。廃棄物が増えると、処理中にGHGのひとつであるメタンガスが発生したり、土壌も汚染される。
生物多様性の観点では、土壌に住む小生物でも生物多様性に関係する。産業中の廃棄物をできるだけアップサイクルするなどして他産業でも使用することも、この取り組みの一つとなる。アップサイクルは、化粧品業界でも近年進んでおり、アップサイクル原料の機能性も高まっている。しかし、どのリサイクルでも、リサイクルすることを前提とした産業開発は行ってはならない。
資源を惜しみなく活用し、そのうえでどうしても出てしまう廃棄物について、リサイクルができないかを考える。美容室など店舗からでる排水も、サプライチェーンにおける廃棄にあたる。また、(2)でも言及したUVクリーム製品については、サステナブル製品選定の視点だけでなく、消費者も環境破壊を起こさずに正しい使用ができるように指南する必要がある。
化粧品や日用品など消費財のグリーンサプライチェーンにおいて4つの工程での生物多様性配慮についての考察を述べてきた。それを各工程でサポートするのが認証である。生物多様性に配慮した認証を正しく理解すれば、サステナブルなアピールに使うこともできる。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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