【週刊粧業2025年6月23日号8面にて掲載】
化粧品マーケティングに携わる方にとって他人事とは思えないニュースとなったのが、カリフォルニア州で提出された「13歳未満への特定スキンケア製品の販売を禁止する法案(AB2491)」ではないでしょうか。きっかけとなったのは、アメリカで人気のセレクトショップ「セフォラ」に小中学生が殺到し、ドランクエレファントやグロウレシピといった高機能スキンケアを買い漁る様子がTikTokで拡散されたことでした。
特に問題視されたのは、これらのスキンケア製品が本来は大人の肌を対象としたアンチエイジングを目的とする製品だった点です。レチノールやAHAなど、刺激の強い成分が未発達な肌に与える影響が懸念され、保護者や医師団体をも巻き込んだ社会的な議論へと発展しました。
この“炎上”の直撃を受けたのが、SNS発の人気ブランド、ドランクエレファントです。アルファ世代(10歳前後)からの熱狂的な支持を集めたことでブランドの認知度は飛躍的に高まりましたが、一方で、成分や使用方法をめぐって親世代からは反発や懸念の声が上がり、ブランドイメージに影響を与える事態となりました。
2019年に資生堂が約8憶4500万ドルで買収したこのブランド。当時は「勢いのあるM&A」として注目を集めましたが、SNSで人気を獲得することは、時として意図しない層にまで拡散され、“ブランドのコントロール不能化”につながるリスクもはらんでいることが今回の件で可視化されました。
とはいえ、こうした現象はアメリカだけの話ではありません。日本では薬機法や店頭での販売管理が厳しいため、「セフォラキッズ」のような極端な事例は起きにくいとされますが、火種がゼロとは言い切れません。たとえば、「親子で化粧品売場に行こう」という企画や、「小学生の愛用品紹介」といった動画は増加しており、アルファ世代が美容コンテンツと日常的に接する環境になりつつあるのは否めません。
だからこそ企業は、「バズったから売れる」「話題だから伸びる」といった短期的な勢いに頼るのではなく、「誰に」「どんな肌に」「どんな目的で」使われるのかといった視点から、商品設計やコミュニケーションを見直す必要があります。
Z世代の次に登場するアルファ世代は、生まれた時からSNSとスキンケアが日常にある“新しい生活者”です。化粧品業界に身を置く私たちは、今までとは異なる視点で、新たな価値観と倫理観について改めて考えるべきタイミングを迎えているのではないでしょうか。
廣瀬知砂子
女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント
実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。
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