花王 塗谷氏、ヘアケア市場の変遷や現状、今後の事業戦略について語る

カンタンに言うと

花王 塗谷氏、ヘアケア市場の変遷や現状、今後の事業戦略について語る
価値ある製品の投入で
ヘアケア№1をより盤石なものに
 2009年1~12月の化粧品出荷統計は、世界的な不況のあおりを受けて、1946年に化粧品工業会が統計をとり始めて以来、最大のマイナス幅を記録した。皮膚用や仕上用が大きく落ち込む中にあって、頭髪用のみが前年をやや下回る程度で推移できたのは、より生活に根差した、無くてはならないアイテム群であることのほかに、この分野におけるリーダーカンパニーである花王が投入する価値ある製品が下支えしたことも指摘できるのではないか。そこで今回は、シャンプー市場の現状や今後の展望、「メリット」「エッセンシャル」「アジエンス」「セグレタ」の4ブランドの強化ポイント、コミュニケーションの革新などについて、塗谷弘太郎ビューティケア事業ユニット プレミアム・ヘアケア事業グループ部長に話を伺った。
シャンプーが低価格化する一方で
高価格帯トリートメントが好調に推移
 ――2009年のヘアケア市場の動向、カテゴリー別の動向についてはどう分析していますか。  塗谷 ヘアケア市場については、2006~07年頃までは、金額構成比の高いシャンプーで大型ブランドが相次いで投入され大々的なプロモーションが展開されたこともあり好調に推移していましたが、リーマンショックが起こった08年下期以降は、全般的にやや下落傾向にあります。  09年のヘアケア市場(シャンプー、トリートメント、スタイリング剤、ヘアスプレー、育毛剤、ヘアカラー等)は卸ベースで約3500億円となっており、前年比99~100%で推移しています。  中身をみると好不調がまだら模様で、09年下期は、シャンプーが98%、トリートメントが110%、スタイリングが98%、ヘアスプレーが89%、ヘアカラー・ヘアマニキュアが107%、黒髪用ヘアライトが100%となっています。09年全体でも、ほぼ前年並みで推移するものと思われます。  景気の影響を最も受けているのがシャンプーで、そこが目下の懸念材料です。  リーマンショック以降は、シャンプーのように毎日使う日用品についても総販売量が下がってきています。不況により、通常2プッシュしていたものを急に1プッシュに変えるとは考えづらいので、家庭内在庫を極力持たないといった消費行動の変化が、瞬間的に総販売量をダウンさせたのではないかと見ています。  景気のいい時期は、全部使い切らないうちにお値打ち感のある企画品を購入するといった購買行動が多く見られましたが、最近ではそうした傾向が影をひそめました。  シャンプーは、498円までの低価格帯が伸びていて、1000円以上の高価格帯ではさほど変化はなく、698円前後の中価格帯が減少傾向にあります。一方、トリートメントでは、1000円以上の高価格帯のジャータイプが伸びています。  現在、シャンプーにおける専用対共用の割合はおおよそ30対70となっていますが、近年、若年女性の専用の比率が下がる傾向にあります。これはあくまで持論ですが、若い女性が限られた予算の中で、シャンプーは家庭のものを使い、トリートメントは自分の髪質に合ったものを使用するといったように変化していることが影響しているのではないでしょうか。
絶えずコモディティ化とのせめぎ合い、
使用する意味のあるアイテム開発に注力
 ――シャンプー市場の今後の展望についてはどう分析していますか。  塗谷 最近では、数量が持ち直してきているものの、依然として単価がダウンする傾向にあり、それが市場縮小の大きな原因となっています。  単価ダウンの主な要因は、未だ続くつめかえ比率の上昇です。ほんの3年前までは5割に達していなかったつめかえ比率(金額ベース)も現在では、66~67%程度まで上昇しています。最終的には69~70%近くまで進むものと思います。それが続く間は、付加価値をつけた上でのダウンサイジングなどを進めない限り、単価アップに転じることは難しいでしょう。  つめかえ比率が70%近くになれば、そういう意味での単価ダウンはなくなります。しかし、このマーケットは過去を振り返ると、常にコモディティ化とのせめぎ合いを繰り返してきましたので、それなりの値段のシャンプーを使いたいと思って頂けるような付加価値のあるものを絶えず提案していくことが、コモディティ化による単価ダウンを防ぐことにつながっていくと思います。  シャンプーは確かに洗浄剤ではありますが、汚れが落ちる、落ちないだけではない繊細な感触が求められるからこそ、一切のごまかしが効かない。そういう意味で、長年培ってきた知見を総動員できるナショナルブランドが強いのだと思いますし、この産業が2000円規模に成長できたのも、そうした繊細かつ微妙なテクスチャーがあったからだと思います。  実は、ヘアケア市場においては、メリットが発売されてからの40年というスパンでみると、大きな変化が起きています。  メリットが発売された1970年代、日本人の多くは週3回程度しかシャンプーをしていなかったので、フケやかゆみを防ぐといったことにニーズがありました。それが90年代に入り人々が毎日シャンプーするようになってからは、マイルド系シャンプーや、カラーリングやパーマのダメージをケアするシャンプーが人気を博しました。21世紀に入ると、アジエンスが発売されたのをきっかけにビューティ系のシャンプーが全盛となり、現在に至っています。  これからは、エイジングケアを含めヘルスケア的なアプローチが一つの軸になるだろうと考えています。フケやかゆみの防止とは違う地肌にフォーカスしたものや、悩みを解消してくれる本質的なダメージケアなど、使用する意味のあるものが求められるでしょう。  ある意味で、花王にとってそこは大きなチャンスだと思っています。しかし、そうした大きな流れに対応できるブランドを持っていない状態に陥ると先行きは厳しくなるぐらいの強い危機感を持って取り組まないといけないと思います。  「メリット」では今春、地肌の汚れを落としつつ、余分なものは持っていかない、本来あるべきシャンプーの原点に回帰したヘルスケア発想のシャンプー・リンスを発売しました。昨秋にシリーズ強化を図った「セグレタ」は、最新鋭のエイジングケアの知見を活かしたヘルスケア発想のブランドへと進化させています。  その一方で、今後もダメージケアが主流であり続けることは確かだと思いますので、「アジエンス」と「エッセンシャル」では、そうしたニーズに応えていきたいと思います。  やはり一番の課題は「アジエンス」だと思います。再度きちんと価値あるものを準備し、戦略ブランドとして進化させようと思っています。

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