花王香料開発研究所は、“人を癒す快適な香り”を求めて、身近な“自然の香り”に積極的に学び研究している。また、和歌山県工業技術センターと和歌山県農林水産総合技術センター果樹試験場うめ研究所では、梅の果実の香りなどの品質や生産性を向上させる品種改良や遺伝系統に関する研究を行っている。このほど、3者共同で、梅の品種による果実の香気成分の分析と、その香りと遺伝系統との関係について確認した。
梅の果実の多くは完熟してから収穫され、梅干、梅酒などに加工されるが、とてもよい香りを発することが生産の現場では知られている。そこで今回は、日本各地の代表的な梅から、和歌山が主産地の「南高(なんこう)」「地蔵梅(じぞううめ)」「白王(はくおう)」、徳島の「鶯宿(おうしゅく)」、福井の「剣先(けんさき)」、群馬の「白加賀(しろかが)」と、近年交配によってつくられた「橙高(とうこう)」「翠香(すいこう)」「露茜(つゆあかね)」の計9品種について、和歌山県うめ研究所内で栽培し、樹上で完熟させた果実の香りについて、香気成分の分析と官能評価を実施。その香りと梅の品種間の近さを示す遺伝系統との関係を調べたところ、次のような結果が得られた。
1つ目の研究では、各梅品種の果実の香りの特徴と分析結果より4つのグループに分類できた。
具体的には、「南高」「橙高」「地蔵梅」は、アップル的なピーチ様の香り、「鶯宿」「白加賀」「露茜」は、フレッシュなリーフィーグリーン様の香り、「白王」は軽いリキュール様の香り、「剣先」「翠香」はマンゴー様のトロピカルフルーツの香りに分けられた。なお、「南高」のグループは、アップル感とピーチ感のバランスがよく、ふくよかな香りを有していた。
2つ目の研究成果として、香りと遺伝系統との関係が示唆された。
「南高」「橙高」「地蔵梅」と、「鶯宿」「白加賀」は、香りが同じグループであり同時に遺伝系統でも近くに位置していた。たとえば、「南高」「橙高」「地蔵梅」は遺伝系統が近く、香りは同じくアップル的なピーチ様だった。このことから、果実の香気生成は遺伝的な影響を受けていることがわかった。
この研究成果は、食品や日用品の開発、梅の品種改良などに応用していく。なお本研究は、第54回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(2010年10月23~25日、山梨大学)にて発表している。
この記事は粧業日報 掲載
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