ワトソンズ、1000店突破の成功要因とは?

カンタンに言うと

ワトソンズ、1000店突破の成功要因とは?

2011年末、ワトソンズ1000店目の店舗は上海・浦东でオープンした。これでワトソンズは“100都市1000店舗”の計画を見事に達成。さらに2016年までに店舗を3000店舗までに拡大し、今後5年間で“3000店計画”のプロジェクトをスタートした。

世界中のドラッグストアのトップとなるワトソンズが成功した要因は以下の通りである。

【戦略の革新】

マーケティング戦略とは企業目標を基づき、市場で実行する前に顧客ニーズの確定、市場好機の分析、会社の強みと弱みの分析、市場競争要素の考慮、想定課題の見通し、チームの育成などを見極めたうえで企業が戦略を市場で実行する方向と法則となるマーケティングプランを最終的に作り上げる。

ワトソンズのマーケティングプランには革新的な商品アイテム、ブランドのポジショニング、明確なるターゲット客層、商品戦略、ビジネスモデル等などのメイン内容がある。

【革新的な商品アイテム】your personal store(中国語:个人护理用品店)

もし業界の中で№1になる可能性があれば、全力を尽くして必ず№1になるべき。もし№1になる実力をもっていなければ、市場を各セグメントに分けて、あるマーケットセグメントの中で№1になるべき。もし№1になれなければひとつのコンセプトを取り上げ、真新しい分野を定義し、その分野の中で№1になるべきと考えている。

ワトソンズはヘルス(健康)とビューティー(美容)とテーマした“your personal store”という店全体のコンセプトを創出した。“your personal store”は普通の化粧品専門店とは同じところもあれば、異なるところもある。セグメント市場におけるパイオニアとしてワトソンズの手法は業界内の見本になる。

ウォルマートやカルフールなどのワンストップのようなスーパーマーケットとは違い、広東省の「娇兰佳人」(ジャーランジャーレン)や、遼寧省のローカル化粧品専門店とも違います。ワトソンズは取り扱っている商品カテゴリーの構成は医薬品15%、スキンケア35%、パーソナルケア30%、あとは食品、健康食品、衣類やアクセサリ等の20%からなる。

【ブランドポジショニング】顧客のメンタル的な認知を重視

ワトソンズは“your personal store”を訴求点とし、安価を切り口にし、“ヘルス・ビューティー・ハッピー”と三つの理念を中心にして、お客様に高品質低価格商品、エレガントなショッピング環境とプロフェッショナルなカウンセリングを提供し、積極的で素敵なライフスタイルを伝達。お客様の生活に情熱ある、品質ある生活を重視しているお客様が内心と外面ともに美しくなることをサポートしている。

医薬品と健康食品の取り扱いは開店以来の特色を保ち続け、“健康”を提唱している。また“ビューティ”を理念に掲げており、スキンケア、ヘアケアおよびパーソナルケアの構成比は最も大きく品目も充実している。それと取り扱っているユニークなキャンディとお菓子は“ハッピー”を呈している。このような三つの理念にあわせて、商品陳列棚(カウンター)、レジまたビニール袋にヘルシー、ビューティー、ハッピーをそれぞれ象徴しているハート、唇、スマイルマークをつけられている。
 
【明確なるターゲット客層】

消費習慣について欧米の国と比べた場合、アジアの女性はショッピングに多くの時間をかける傾向がある事がわかった。彼女らはより多くの時間をかけて、より安いまたは自分に合う商品を探したがる。中国女性の店舗平均滞在時間は約20分間、それに引き換え欧米はわずか5分間という短時間に過ぎない。この差異を分析した結果、中国大陸の18歳~40歳の女性をターゲット客層とし、さらに18~35歳の女性に焦点を絞っている。

18歳~35歳までの女性は新商品や新体験に対して興味津津であり、人前で自己表現をしたがる傾向にあり、40歳以上の女性は固定の商品を使い、ライフスタイルも単純という分析結果が出ている。18~35歳までの女性は個性を重視し消費購買力もある。ただし、時間の余裕があまりないので、広いスーパーマーケットやショッピングモールにはあまり行かない。

【クロスオーバーの業務提携】

ワトソンズは“ファッション”と“不動産”という、まったく違う二つの業界と繋がり、資源を共有している。大手の商業不動産と業務提携してからは、中国全土での新規出店スピードが一気にアップした。

2010年2月19日にワトソンズは、中国大手商業不動産2社、Dalian Wanda Groupと中糧置業投資有限公司のそれぞれと業務提携協議書を交わした。これでワトソンズと2社不動産と共に店舗数を拡大していくこととなった。

【吸収合併の加速、巧みに資本を運用】

周知の通り、ワトソンズの後ろ盾は長者番付によく現れる人物 ― 李嘉誠が持っているHutchison Whampoaグループ(和記黄埔有限公司)である。“金持ち”という代名詞が付けられているこのグループの後押しで、ワトソンズは見事に吸収合併の道を走っていった。

イギリスのSavers系列店、オランダのKruiavatグループ、ラトビアのDROGAS小売系列店、イギリスのMerchant  Retail香水系列店、マレーシアのApex Pharmacy Sdnbhdドッラグスドアなどの吸収合併したことでワトソンズがPBブランドの商品開発と導入を大きく前進させる事に成功した。

2005年にワトソンズは、55億HKドルでフランスにおけるもっとも大きく、歴史のある香水販売会社―Marionnaudを買収し、そして本部がサンクトペテルブルクにあるSpektr Group系列店を侵食した。

いくつもの買収や合併した結果、ワトソンズはアジアからヨーロッパへ踏出し、グローバル化の道をたどる事になった。

【戦術設定】

マーケティング戦術とは企業がターゲット市場、市場ポジショニングを決定したうえであらゆる実行可能な販促方法を組み合わせてみたりし、策定するもの。それではワトソンズはどのような戦術を用いて商品の価格や販促など決定しているのかをみていく。

【出店位置選定】

ワトソンズは集客ある大型スーパーマーケットの隣でもビジネス圏の奥でも出店可能としている。それはあまり賃貸料金にはこだわらず、商品の価値を重視し、便宜を図れる客層をターゲットしているからこそ、そういった立地条件でもワトソンズのブランドイメージ形成には有利になることがあるからだ。

ワトソンズの立地出店条件は下記の通りに分けられている。
商店街店舗、ビジネス圏店舗、駅前店舗、住宅密集地店舗、ショッピングモール店舗

【商品の更新で顧客のロイヤリティアップ】

商品は企業が売上目標達成を実現するうえで大きな核となっている。ワトソンズはサプライヤーから商品を導入するほか、PBブランドの開発もしている。低コストなPBブランドは値段の割安感から顧客の興味を呼ぶ。

同時にワトソンズはターゲット客層が、値段よりも個性と自己満足感を求めていることも分析上わかっているので、PBブランドのアイテムを更新・拡大したりして、PB商品の構成比は現在約20%までに至っている。

ワトソンズは導入ブランドとPBブランドをバランスよく取り扱うことでコストダウンと顧客のロイヤリティアップを実現することができた。

【廉価保証】

ワトソンズはよく商品の品類と商品の価格を考慮したうえで、“お得セット“を販売している。そうする事により「低価格で高品質」の商品を顧客に提供し、利益と顧客のリピートともに確保することができた。

2004年、ワトソンズは大人気の健康商品とスキンケア商品1200アイテムを小売価格より約5%OFFで販売促進活動を行った。その結果、その商品群の中にPB商品が15%を占めていた。しかも販促活動中にPBブランドの値段は、ほかのスーパーマーケットに販売されている同類商品よりも20%~30%安かったのである。

ワトソンズは、知名度あるブランド商品を導入しながらも、品質管理、パッケージデザインを工夫したPBブランドも商品開発。つまり、品質保証と価格訴求力で顧客を獲得して、また売上アップになるお得セットで販促活動を行う。ワトソンズの競争力ある戦略である。

【店頭販促活動】

ワトソンズの店頭販促活動について、難しいことをした訳ではないが競争激しい状況の中において、なぜ他社より優れているのかと言うと、まずワトソンズは他店では手に入らないワトソンズならではの商品を取り扱っているのが重要なポイントである。それから、“特別プライス商品、会員ポイント交換、BUY ONE TAKE ONE(1個買うと1個FREE)”という三つの販促手段がワトソンズの販促活動の主力モデルになっている。こうした販促モデルは決まりきったやり方のように見えるかもしれないが、ワトソンズだけ顧客心理を掴み有効活用できている。

店頭において実施している頻繁な販促活動には下記のとおり12形式ある。

①お得なポイント交換。活動期間中に、商品を3つ選定。お客さまに一括50元以上のお買い上げで、さらに10元プラスして頂くとPB商品である3つの中から一つを進呈。(利益を確保しながらお客様もお得した気分になる)

②独占特典。サプライヤーと事前交渉して特別支援協力をもらい、他店にない特典を行えると言うこと。

③添付品付き特典。商品1個を購入していただくと1個進呈、2個購入していただくと1個進呈、大きいサイズを購入していただくと小さいサイズを進呈、商品を購入していただくと粗品を進呈などなど。

④中身増量キャンペーン。値段を変えずに商品中身を増量。パッケージやPOPなどで33%増量とか550%増量とか、目立つようにしている。このようなやり方はよくハンドクリーム、シャンプーなどの商品販促の一環として用いる。

⑤クーポン券進呈。クーポン券を自店DM、チラシに印刷し、お客様がクーポン券を持って指定した商品を購入していただくと、クーポン券に明記した金額分をディスカウント。

⑥お得セット。サプライヤーに依頼して限定商品を作ってもらい綺麗なパッケージに変更してもらいお得感を与える。

⑦安価商品。安価商品を店内の目立つところに山盛りにして顧客の目線を引く。

⑧引換券。販促活動告知チラシの角のところに〇〇元当たる引換券を設けて、活動期間中に〇〇元のお買い上げがあれば引換券を持ってお金同様として使える。

⑨値引き。同じ商品を2個購入していただくと1割引き等々。

⑩VIP会員。ワトソンズは2006年9月から会員カード制度を開始。2週間ごとに会員様向けの値引き商品を提供。

⑪贈答キャンペーン。顧客への贈答をテーマとした販促活動。主に一部商品を通常より多少安く販売する。

⑫販売コンテスト。販売員及び販売員が所属しているメーカーに競争意識をつけるため、定期的に販売対象の商品を指定し、販売コンテストを行う。売上順にTOP3には奨励。

【PR発信、企業ブランドビルディング】

ワトソンズは商品を販売するだけではなく医療、教育、レジャーなどの社会的に注目される活動にも取り込んでいる。

2002年、ワトソンズは香港“癌”基金会と手を組んで“ピンク革命”というプロジェクトを立ち上げし乳癌の治療研究のため、募金活動を行った。

2003年、ワトソンズは中国児童少年基金会が実施している“春蕾計画”というプロジェクトに支援し、235800元を寄付した。

2004年6月、ワトソンズはPB商品―新キウイジュースを新発売した時にDisney Co. U.S.とタイアップし深センで“ディズニー100周年キャラバン”を展開した。

利益を追求するより、企業のイメージ形成の方がすごく重要であり、積極的に社会貢献活動に取り込み、企業自体をブランディングしている。

【課題と向き合う】

2011年12月23日、華潤グループ傘下のELVIVO系列店10店目の店舗が安徽省安慶市でオープンに伴い、化粧品小売業において外資、台湾系、香港系、国営とローカル系が一堂に集まり、競争の激しい状況となった。

①一級都市においては、“トライ体験”を訴求するフランス系のSEPHORA、ワトソンズと同じようにPB商品が強い香港SASA、またターゲット各層、立地などワトソンズと同様な台湾統一グループ傘下の康是美ドラッグストアと競合になる。二、三級都市においてはローカル化粧品専門店に囲まれ競合となっている。

②顧客流出というのもワトソンズの課題。 “ヒューマンヘルスケアを買うならスーパーへ、化粧品を買うなら百貨店へ”という既存の消費習慣により一部の顧客が流出している。

③メーカーから疎遠される課題。ワトソンズはPBブランドの強まりに伴い、時にメーカーと競争にもなる、またメーカーにとっては自社商品がワトソンズにコピーされる可能性もあるという懸念があるので、ワトソンズを疎遠する傾向のメーカーも存在する。

④中国ネット通販の発展もワトソンズに影響を与えている。現在中国においてネットユーザは2011年上半期だけで4.85億人であり、その中でも携帯電話からのモバイルネットユーザーが3.18億人である。今後ネット通販がさらに発展していくのは間違いない。消費主力は80、90後が中心になっており、ネットショッピングはもうファッション分野だけでなく大きな主力消費習慣になってきている。

このような状況下の中、ワトソンズはさまざまな課題と向き合い、今後の成長の為に日々チャレンジしていかなければならない。

記事提供元化粧品観察日本総窓口・株式会社エイトセンス

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