花王感性科学研究所はこのほど、約400種存在するヒトの嗅覚受容体の中から、ヘキサン酸に応答する嗅覚受容体を5つ特定することに成功した。
また、約140種類の香料成分の中から、受容体の活性化を抑制する作用のある成分を見出し、これらの香料とヘキサン酸を同時に嗅ぐことで、ヘキサン酸特有の嫌なにおいが抑えられることを確認した。
今回の一連の研究で、特定のにおい物質に対する嗅覚受容体の活性化を特定物質で抑制するメカニズムに基づく、新しい選択的な消臭技術の可能性が明らかになってきたという。
特定のにおいを別のにおいで抑制する現象について科学的に解明した今回の成果を、快適な生活実現に貢献するモノづくりに応用していく。
研究では、ヒトの嗅覚受容体を発現させた培養細胞の評価系を用いて、400種のヒト受容体のうち、どの受容体がヘキサン酸によって応答するかを調べた。 細胞に発現させた嗅覚受容体が活性化すると細胞内の情報伝達物質が増加するが、この情報伝達物質の増加をにおい応答として測定した結果、5つの嗅覚受容体がヘキサン酸により活性化されることが明らかとなった。
そこで同社では、ヘキサン酸によって活性化される嗅覚受容体に対し、香料成分をヘキサン酸と同時に加えることで、受容体の活性化を抑制する作用(アンタゴニスト作用)を有する香料成分の探索を行った。
約140種類の香料成分の中から、フローラルの香りの「フロルヒドラール」「ブルゲオナール」「イソシクロシトラール」をそれぞれ同時に加えると、ヘキサン酸によって活性化が認められた5つの嗅覚受容体のうち4つの受容体の活性化が50%以下に抑えられることがわかった。これは、香料成分がヘキサン酸の嗅覚受容体への結合を拮抗的に防いだことによるものと考えられるという。
さらに、ヘキサン酸による嗅覚受容体の活性化を抑制する香料成分「フロルヒドラール」「ブルゲオナール」「イソシクロシトラール」を添加することで、ヘキサン酸臭を実際に抑えられるかを官能評価で調べた。
脱脂綿にヘキサン酸を染み込ませたものを入れたガラス瓶を一定時間放置し、その時のにおいの強さを0から5の6段階評価で「5」としたが、「フロルヒドラール」などの3つの香料をそれぞれ染み込ませた脱脂綿を同時に加えたときのヘキサン酸臭を評価したところ、においの強さの減少が認められた。
なお、同研究成果は、日本味と匂学会第47回大会(仙台市、9月5~7日)にて発表している。
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この記事は粧業日報 掲載
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