佐賀県唐津市とフランスが連携して化粧品の一大産業集積地を同市につくるべく、2013年に設立されたジャパン・コスメティックセンター(JCC)はこのほど、市内ホテルで「2014年度第2回通常総会」を開催した。
総会には会員企業、団体101社が出席し、「2015年度事業計画について」「2015年度収支予算について」「一般社団法人ジャパン・コスメティックセンターへの権利義務の承継について」など5議案が審議された。
まず、第一号議案の「2015年度事業計画について」は、2015年度のフランスコスメティック・バレーとのビジネス交流事業やアジア市場への進出、開拓事業に関して具体的な計画を示したほか、唐津市や玄海町一帯の植物、薬草などの地域資源の調査研究、活用に関して工程を示した。
第二号議案の「2015年度収支予算について」は、会費は2014年度と変わらないが、会員の増加による行政からの負担金収入が増えたため、収入は約1507万円を見込むとした。
第三号議案の「一般社団法人ジャパン・コスメティックセンターへの権利義務の承継について」は、これまでのJCCでは法人格を持たないために国の助成金を受けられないなど不都合が生じていた状況を解決するために、JCCと目的を同じくする新法人を別途設立するというもので、2015年4月1日付の設立を目指していた。これに伴い、理事会の副会長数を2名から3名に増員し、総会の実施頻度は、通常総会を継承する形となった決算総会(年1回)のみに変更する。
このほか、第四号、第五号議案としてそれぞれ「現行JCCの解散」「残余財産の処分」が議案として提出され、第一~第五号議案まで賛成多数ですべて可決された。
アルビオン、安心安全の徹底で差別化・高付加価値化へ
また、JCCは総会開催にあわせて記念講演を開催した。今回の記念講演では、アルビオンから染谷高士取締役カスタマーサービス本部副本部長と、ポーラから砂金美和商品企画部B.Aブランドマネージャー課長を講師に招いた。
講演に先立ち、佐賀県から1月に県知事に就任したばかりの山口祥義(よしのり)知事が登壇した。山口知事は、前職で秋田県の地域振興に取り組んでいた際にアルビオンの染谷氏と面識があったといい、再会を喜ぶと同時に「コスメを通じて地域振興のお手伝いをしてほしい」と挨拶した。また、講演会の出席者に対し「古いモノも本物であるから素晴らしい。私が掲げる『世界に誇れる佐賀県づくり』とは今まで綿々と佐賀の皆さんが培ってきたものを大切にすることとあわせ、『本物を探す』という意味でもある。コスメも本物を追求していくという気概が大切だ」と激励した。
講演会の第1部では、アルビオンの染谷氏が「アルビオンの独創的なモノづくり~外部連携による化粧品開発~」について講演した。
同社は高級化粧品の第一人者として知られるが、染谷氏は「私たちの言う高級化粧品とは、『価格の面での高級』だけではない。高い次元でお客様のご要望に応えるという意味もある。その根幹は独創的な商品、他では手に入らない、味わえないことが重要で、当社の開発部門ではこのことを『こだわりのモノづくり』と表現している」と前置きした。技術面では、研究や理論といった「左脳型」によるものとビジュアルや感覚、イメージなど「右脳型」による価値がある。染谷氏は、化粧品には肌に対する効果と商品を使う喜びを同時に実現しなければ価値は生まれないとした。JCCの場合は、「地域資源の有効活動」を理念の1つに掲げているため、安心安全といったトレーサビリティをサイエンス的な観点ではなく「右脳型」で訴求していくことが最適と指摘した。
「食品の安全性の問題と同じように、化粧品も安全性が重要だが、植物成分においてはどこで、誰が栽培しているのか、どういう経路で納品されているのかというトレーサビリティがわかりづらい。その部分を透明化することで、差別化し、高付加価値化へと導くことが大切だ」(染谷氏)
例えば同社は自社栽培による安心安全の追求のため、白神研究所(秋田県藤里町)で栽培されているヨモギを使って素材を開発しており、素材から抽出された成分は「イグニス ネイチャーシリーズ」に配合されている。
また、現在の「スキコン」に配合されている濃縮ハトムギエキスは、漢方や薬草の研究などを行い、国産の薬草復活に取り組む医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター(北海道名寄市)が品種改良して、肌荒れを抑えるヨクイニンの含有量を増やすなど高付加価値化したハトムギ「北のはと」を使っている。
産学産連携による成分開発では、昨年10月にリニューアルした「エクシア モイスチャーライン」や今年4月に発売予定の「同 ホワイトニングライン」に配合されているヒトリシズカのエキスが挙げられる。このヒトリシズカは王子ホールディングスが北海道に保有する広大な原生林で収穫したもので、北海道医療大学とともに成分研究を行い、化粧品の素材化に成功した。
こうした活動は国内にとどまらず海外でも展開予定で、2013年10月にはスリランカにアルビオンと東京農業大学産学連携研究所「スリランカ伝統植物研究所」を開所した。今年4月から本格的に研究が始まるという。
「今、日本の化粧品は海外からも注目され、特に中国からものすごい数の観光客が押し寄せて化粧品を買いにくる。効果だけではなく安心・安全面からも評価をいただいている結果ではないか。日本の化粧品は技術に関しては一流なので、そうしたものを付加価値にすることで、日本の成長戦略の中に化粧品産業が加わればいいなと思っている。その意味でJCCの活動は大変有意義だ」(染谷氏)
ポーラ、価値ある素材の発掘と共感性の付与が重要
第2部では、ポーラの砂金氏が「ポーラB.Aシリーズから学ぶ製品開発からブランド開発・育成へのシフト」と題し、B.Aシリーズの開発からコンセプト、進化、開発の背景となる最先端研究など独自のブランド開発における戦略について紹介した。
B.Aは、1985年に発売され今年30年目を迎えるロングランブランドだ。ポーラ最高峰と位置づけられているが、訪販を中心に展開してきたためマスへの認知が低かったが、近年「ブランドの見える化」のため、百貨店やECサイト、海外市場などに展開の幅を広げたため認知度が急激に拡大しているという。
B.Aが重要視しているのは「革新性を軸にした商品開発」だ。それを実現するために、「最先端の理論と成分が搭載されていること」「新しい処方化技術が確立されていること」「使っていて心地いいと感じられる感性品質が得られること」の3つを掲げ、確実な品質を設計しているという。2010年にはラインナップを拡充し、複合的に使うことにより効果実感が高まるという「パーフェクト・シナジー効果」を訴求した結果、現在までに単品使いではなくライン使用者の育成に成功している。
また、このほかマスクを泡状にして肌に入れ込むというユニークなアイデアを打ち出し、既にある概念でも見せ方を変えることによって新たな価値が生まれることを説いた。若年層のアンチエイジングに関しても、ストーリーを変えれば価値が違うように見えてくるということを、「B.A RED」を事例に挙げて説明した。
様々なメディア戦略により「見える化」に成功しているが、一方で「どこで買えるのかがわからない」のが課題と砂金氏は話す。地方に行けばいくほど店がなく、今後は「店舗の見える化が必要だ」(砂金氏)として、訪販型から誘客型まで対応できるビジネスモデルの構築を進めていく考えを明らかにした。
砂金氏はJCCの活動について「本当に価値のある素材の探究、開発、発掘をベースにしつつ、価値化することに取り組んでいる。その中で『いいモノ』にとどまることなく、地域ながらのストーリー性、共感性を付与することで日本だけでなく世界に対して大きな価値を示すことができるのではないか」と評価し、講演を締めくくった。
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この記事は週刊粧業 掲載
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