フラーレンを化粧品原料として世界で唯一展開しているビタミンC60バイオリサーチは、昨年、既存の「ラジカルスポンジ(RS)」と「リポフラーレン(LF)」に続く新たなフラーレン原料「モイストフラーレン(MF)」「ヴェールフラーレン(VF)」を発売した。同社が新製品を発表するのは実に6年ぶりとなる。
昨年6月に開催された「CITE Japan 2015」で初披露後、予想をはるかに上回る勢いで引き合いが増えており、すでに商品化も進んでいる。発売から1年が経過したMF、VFについて改めて紹介するとともに、今後の化粧品原料としてのフラーレンの課題と展望について、林源太郎社長に話を伺った。
6年ぶりに新原料を2種発売
エビデンスも取得し商品化進む
2005年に商品化第一号原料となる水溶性フラーレン「ラジカルスポンジ」を発売後、さらに研究開発を進め2009年に油溶性の「リポフラーレン」を発売した同社は、フラーレンに関する様々なエビデンスや安全性を確認してきた。
「未知の化粧品原料」といわれながらも、発売直後からクリニックのオリジナル品やドクターズコスメなどでの採用が相次いだのも、こうした効果効能に関する豊富なエビデンスの取得や安全性に対する積極的な取り組みが奏功したためだ。
現在では1500件以上のクリニックで採用実績があるという。発売から10年が経過したが、フラーレンが原因とみられる肌トラブルの報告はないといい、こうしたことも安全性の証明となり、信頼へとつながっている。
フラーレンは、同社の研究者が「研究すればするほど様々な機能が新しく確認できた」と評するほど多くのエビデンスを持っており、現在までに抗酸化からはじまり、角層バリア、エイジングケア、保湿、ブライトニング、毛穴ケア、ヘアケアなどへの有用性が確認されている特徴的な原料だ。
これまでに培ってきたその多くの知見と安全性への取り組みを活かし、新原料の「モイストフラーレン」と「ヴェールフラーレン」は誕生した。
「モイストフラーレン」は、フラーレンの特徴の一つである抗酸化能に、さらに保湿機能を高めた製品だ。フラーレンは、角層のバリア機能を回復させ、肌本来が持っている保湿機能を引き出す効果が確認されているが、MFは天然保湿因子NMFの発現を増幅させ、保湿機能を大幅に高めることが確認されている。
既存原料である「ラジカルスポンジ」よりも保湿性が高く、その数値については角層水分量の比較試験などでも実証されている。
角層水分量に関しては、男女10人に、28日間にわたって、MF配合美容液とコントロール美容液を連用して、水分量の比較を行った。すると、MF配合美容液は、MFなしの美容液と比較して連用後に1.5倍水分量の上昇が確認できた。
これに関連して、バリア機能が低下した肌に対して、その機能を回復させるとともに、角層水分量も上昇することがわかっている。
また、MFに関してはエイジングケア機能の中で検証が難しいとされているたるみについても測定を行った。評価方法については、半顔試験を用い、目の下や頬部にシールを貼り、座っている時と寝ている時のシールの移動距離を測定して評価を行った。
その結果、MFなしでは目の下、下頬部ともに3~6ミリ程度の移動が確認できたのに対し、MF配合美容液では、1.5~4ミリ程度まで移動を抑えることが確認された。
また、MFを調整時に他の有効成分と一緒に混合することで、フラーレンだけでなく他有効成分が配合されたリポソームを形成し、フラーレンのオリジナルカプセルをつくることが可能となる。油溶性の成分との相性が良く、現在までに同時に3種類の有効成分の混合が可能なことが確認されているという。